Googleが12月13日に発表した、自動運転車の研究開発会社「Waymo」(ウェイモ)の設立は、今後のモビリティの方向性に大きな示唆を与えるものと受け取られているようだ。世間を賑わせた「撤退報道」から「新会社設立」まで、改めて海外報道も交えながら最新動向をまとめてお伝えする。Googleの自動運転車の研究開発は、人工知能や音声認識など革新的な次世代技術の開発を行う「X」のプロジェクトの一つとして進められてきた。ハンドルもペダルもなく、ソフトウエアとセンサーによって完全に自動制御される自動運転車の実現を目指し、2014年には自社開発の自動運転車のプロトタイプを発表。2015年から公道走行テストも行われていた。新会社Waymo設立の公式発表に先立ち、米国のテクノロジーニュースサイトThe Informationは12日、「プロジェクトに最も近い関係筋の情報として、Googleの持株会社アルファベットが、ハンドルもペダルもない革新的な車の開発計画を、少なくとも当面は諦めた」と報じた。同サイトによれば、Googleは今後「自動車メーカーと提携し、より伝統的な機能を備えた自動運転車の現実路線に舵を切った」とされる。米国のニュースサイトThe Vergeはこの報道を受け、アルファベットCEOラリー・ページなど、ハンドルもないまったく新しい車の自力生産の計画に現実性を認めない反対派と、 まるごと開発したいXの自動運転車部門との間に、対立の動きがある、と伝えた。Waymoのジョン・クラフシックCEOは、公式発表において、社名のWaymoを「モビリティを推進する新しい方法」と説明。アルファベットの新たな企業となることで、「ヒトやモノをより安全に簡単に移動させる」使命をもつ自動運転技術会社として大きな一歩を踏み出した、と強調する。さらに「世界が想像していないような形で多くの新しいタイプの製品、仕事、サービスを生み出す」自動運転技術の長期的なビジョンに言及している。NewYork Timesは13日、Waymoのスピンオフは、「Googleの自動運転技術が研究プロジェクトを超えて進歩し、商業化の準備が整ったと考えていることを示す」と解説。自動車会社ではないGoogleが、いかにして自動運転車から収益を上げることができるか。クラフシックCEOは「我々のビジネスは、より良い車を作ることではなく、より良いドライバーを作ること」と報じており、完全自動運転車の自社開発よりも、自動運転システムを自動車メーカーに提供する方向性がうかがえる。また、Googleは2017年末にフィアット・クライスラーのミニバンでライドシェアリングサービスを開始する予定だとBloombergは伝えている。このサービスのために、5月に両社が共同開発に合意した100台以上の自動運転車ミニバンを要する見通しだが、アルファベットもフィアット・クライスラーも、この計画についてはコメントを出していない。この一連の動きから、Bloombergは「モビリティは、高い代価で購入し駐車場に大事に保管しておくマシンではなく、アプリから注文するサービスになりつつある」と、自動運転車が差しかかろうとしている「岐路」を観察する。都市の渋滞の大幅な軽減、また人的ミスによる交通事故の死亡者数の劇的な減少、さらに輸送そのものの概念の変革が、テクノロジーに期待されている。「2035年には世界売上高の4分の1を占める」と見込まれる自動運転車ビジネスにおいて、Googleの戦略は今後も注目を集めるだろう。