2026年8月13日から千葉県を襲った「令和8年8月千葉豪雨」では、道路冠水などによって多数の車が被災した。千葉市だけでも、豪雨後に道路上へ放置された車両は約2500台に達した。
なぜこれほど多くの車が動けなくなったのか。雨量を詳しく見ると、総雨量だけでは見えない今回の豪雨の特徴が浮かび上がる。
●千葉市内だけで2500台放置
千葉市によると、市内の道路上には豪雨後、約2500台の放置車両があった。このうち通行の支障となる約500台は8月17日朝までに路肩へ移動し、通行を確保した。その後も撤去を進め、8月22日までに市管理道路上で市が撤去した被災車両は、幹線道路321台、生活道路63台の計384台となった。
国土交通省も県内各地の放置車両について道路啓開を進めた。8月19日17時時点では、残存する放置車両は国管理道路28台、千葉県管理道路47台、県内市町村227台の計302台だった。千葉市管理の幹線道路については0台となっていた。
なお、千葉市の約2500台と国交省の302台は集計時点や対象が異なる。このため単純に合算して「県内で約2800台が水没した」とすることはできない。また「放置車両」は必ずしもすべてが完全に水没した車両を意味するものでもない。それでも千葉市だけで約2500台の車が道路上に残された事実は、今回の豪雨による自動車被害の大きさを示している。
●1時間115mm、6時間では293mm
多数の車が被災した背景として注目されるのが、雨の「量」だけでなく「降り方」だ。気象庁によると、千葉市中央区の「千葉」では8月13日、最大1時間降水量115.0mmを観測した。それまでの観測史上1位だった71.0mmを大幅に上回り、記録を更新した。
さらに最大6時間降水量は293.0mmに達した。これも従来の観測史上1位だった211.0mmを更新した。佐倉でも211.5mmを記録して観測史上1位を更新したほか、茂原では194.0mm、我孫子では170.5mm、船橋では168.5mmに達した。
つまり、瞬間的に猛烈な雨が降っただけではない。極めて多い雨が数時間にわたって集中したことが今回の特徴だった。

●2023年より日雨量は少なくても…
茂原の数字を過去の豪雨と比べると、その特徴がさらに見えてくる。茂原では2023年9月8日の大雨で日降水量391.0mmを記録した。これに対し、今回の8月13日は240.0mmだった。日降水量では2023年の6割程度だ。
いっぽう、今回の最大3時間降水量は142.0mmに達した。8月としてそれまで最多だった94.0mmを大幅に更新した。最大6時間降水量も194.0mmで、それまでの8月最多だった114mmを上回った。今回の自動車被害を考える場合、「1日に何mm降ったか」だけでなく、「数時間にどれだけ集中して降ったか」という視点が重要になる。
●豪雨が都市部を直撃
もう一つの要因は、極端な短時間豪雨が千葉市をはじめとする都市部を直撃したことだ。千葉市や船橋市、佐倉市、我孫子市などで短時間に大量の雨が降った。こうした地域には住宅や道路が広がり、多数の自動車が駐車、走行している。
そのため、今回の大量の被災車両については「人口や自動車が多い地域で豪雨となったため」という側面もある。いっぽう、それだけではなく、道路の排水能力を超えるような雨が短時間に集中したことが、被害を大きくした可能性がある。

●浸水想定区域「外」でも被害
今回の水害では、河川周辺だけでなく道路冠水が広い範囲で発生した。
ウェザーニューズが被災地域で実施した緊急アンケートには1万9件の回答が寄せられた。同社がウェザーリポート約1万件と合わせて分析したところ、冠水や浸水被害に遭遇した人の約2人に1人が、国や自治体が定める水害リスクの高い地域の「外」で被災していたという。8月13日14~24時だけでも、千葉県内から9938件のウェザーリポートが寄せられた。
大河川の氾濫などによって住宅地が広範囲に浸水する水害では、住宅や駐車場に止められた車が被災する。いっぽう、短時間に排水能力を上回る雨が降り、道路やアンダーパス、低地が急速に冠水すれば、駐車中の車だけでなく、走行中の車も被害に遭う可能性がある。
千葉市は今回、災害対策基本法に基づき、緊急通行車両の通行を確保するための道路区間を指定。放置車両や立ち往生車両を移動する措置を取った。国土交通省も「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」を継続して公表し、道路の被害や規制、被災車両への対応を進めた。
●「総雨量」だけでは見えない自動車被害
今回の豪雨による水没車、被災車両の最終的な総数はまだ明らかになっていない。このため、過去の水害と比べて「雨量の割に水没車が多かった」と断定することは現時点では難しい。
ただ、千葉市で観測史上最多となる1時間115.0mm、6時間293.0mmを記録したこと、茂原でも3時間雨量が8月の過去最多を大幅に更新したこと、さらにこうした雨が都市部を直撃したことは確認できる。
今回の大量の被災車両は、「自動車の多い地域で大雨が降った」というだけではなく、短時間集中豪雨、都市部の道路冠水、多数の自動車という条件が重なった結果とみることができる。自動車の水害リスクを考える際には、「どれだけ降るか」という総雨量だけでなく、「どれほど短時間に集中して降るか」にも注意する必要がありそうだ。


