千葉県では8月13日、記録的な大雨となり、気象庁は千葉市や市川市、船橋市、市原市などにレベル5大雨特別警報を発表した。豪雨では道路が短時間で冠水することがある。冠水路に自動車で進入すると、エンジンやモーターが停止するだけでなく、水圧によってドアが開かず、乗員が車内に閉じ込められる危険がある。
国土交通省やJAFは、冠水した道路に安易に進入しないよう呼びかけるとともに、万一、自動車が水没した場合の脱出方法を紹介している。
●水位上昇でドアも窓も開かなくなる
冠水路で自動車が動けなくなった場合、時間の経過とともに脱出は難しくなる。
国土交通省によると、冠水した道路を自動車で走行すると、車内への浸水によってエンジンやモーターなどが停止し、移動できなくなる危険がある。さらに水位が上昇すると、車外からの水圧によって内側からドアを開けることがほぼ不可能になる。
JAFによると、パワーウインドウも水による電気系統のトラブルやガラスにかかる水圧によって開かなくなる場合がある。そのため、車両が水没し始めた場合は、できるだけ早い段階で脱出することが重要だ。

●脱出は「ドア→窓→ハンマー」の順
国土交通省は、水没した車両から脱出する手順を段階的に示している。
まず、水位が低いうちにドアを開けて脱出する。水圧などでドアが開かなければ、窓を開けて脱出する。ドアも窓も開かなければ、脱出用ハンマーで窓を割って脱出する。それでも脱出できない場合は、浸水によって車内外の水位が同程度になると水圧差が小さくなり、ドアを開けられる可能性が高まる。
日産自動車も、水没した場合はまずシートベルトを外し、水位が低いうちにドアから脱出するよう案内している。ドアが開かなければパワーウインドウで窓を開け、それもできなければ緊急脱出用ハンマーを使うとしている。
●要注意、フロントガラスはハンマーで割れない
脱出用ハンマーを備えていても、どの窓でも割れるわけではない。特に注意したいのがフロントガラスだ。
JAFは、水没した車内からの脱出を想定し、ヘッドレストやスマートフォン、車のキー、ビニール傘、脱出用ハンマーなどで窓を割れるかテストしている。その結果、窓を割ることができたのはテストした脱出用ハンマーだけだった。しかし、脱出用ハンマーでもフロントガラスを割ることはできなかった。
フロントガラスには、2枚のガラスの間に中間膜を挟んだ「合わせガラス」が使われている。割れた場合でもガラスが飛び散りにくく、貫通しにくい構造だ。このため、一般的な脱出用ハンマーでは破砕して脱出口を作ることができない。国土交通省も「フロントガラス等の『合わせガラス』は割れません」と注意を呼びかけている。
●サイドガラスも割れない車がある
さらに注意したいのは、「サイドガラスなら必ず割れる」とは限らないことだ。
JAFによると、一部車種のドア(サイド)ガラスには、フロントガラスと同じ合わせガラスが採用されている。こうしたガラスは脱出用ハンマーでも割ることができない。日産も、フロントドアガラスやリアガラスに合わせガラスを使用している車種があり、その場合は緊急脱出用ハンマーで割ることができないと注意を呼びかけている。

実際に車種によって、脱出用ハンマーで割ることのできる窓は異なる。2026年7月発売の日産『エルグランド』新型では、取扱説明書でフロントウインドーガラスとドアガラスに合わせガラスを採用しているとしている。このため、これらは緊急脱出用ハンマーで割ることができず、日産はリアサイドガラスまたはバックドアガラスを割って脱出するよう案内している。
いっぽう、6月からの『キックス』の取扱ガイドでは、フロントウインドーガラスは合わせガラスのため緊急脱出用ハンマーでは割れないものの、フロントドアガラス、リアドアガラス、バックドアガラスを割って脱出するよう案内している。
つまり同じ日産車でも、エルグランド新型ではドアガラスが脱出口として使えないのに対し、キックスではドアガラスが脱出口として示されている。車種によって「どの窓を割ればよいか」が異なることを示す具体例だ。日産は、ドアガラスに合わせガラスを使用しているかどうかについて、ガラスの断面や刻印から確認する方法も紹介している。ただし、車種によって刻印が表示されていない場合もあるので注意が必要だ。
●脱出用ハンマーは手の届く場所に
JAFのテストでは、ヘッドレスト、スマートフォン、ビニール傘、車のキーなどでは窓を割ることができなかった。
万一に備えるなら、専用の脱出用ハンマーを車内に用意しておくことが重要になる。ただし、トランクなど乗員がすぐに取り出せない場所では、水没時に使用できない可能性がある。国土交通省は脱出用ハンマーについて「命綱」の確保として搭載を呼びかけている。
また、脱出用ハンマーを用意するだけでは十分ではない。自分の車のフロント、サイド、リアの各ガラスが合わせガラスなのか、ハンマーで破砕できるガラスはどこなのかを、取扱説明書などであらかじめ確認しておく必要がある。日産エルグランドとキックスの例からも分かるように、同じメーカーでも車種によって脱出できる窓は異なる。
冠水路で車が停止してから対応を考えるのでは遅い場合がある。冠水した道路には進入しないことが第一であり、万一に備えて「どの窓から脱出できるか」まで確認しておくことが、水害への備えとなる。


