2026年5月26日と27日の2日間、千葉県浦安市にある株式会社オートバックス次世代自動車研究所にて、自動車整備事業者を対象とした新エネルギー車(NEV)整備集中プログラム「Training Course on New Energy Vehicle by 北京北方国際教育技術有限公司(Beifang Automotive Education)」が開催された。
主催のARCネットワークサービスが企画した本研修は、座学を中心に展開されつつ、一部では実車(Tesla Model 3)を用いた実践的な内容も組み込まれ、EV先進国のNEV整備技術に触れる貴重な機会となった。

中国トップクラスのNEV専門校の第一人者が来日
今回、研修に協力されていたのは、1993年に創設された中国の自動車専門職業訓練校「北京北方国際教育技術有限公司」だ。
同校は約13,000平米の広大な敷地に、各種BEVの構成パーツ展示や実習トレーニング用ブース、オンライン授業ブースなどを備え、オンラインとリアルの双方をサポートする中国国内有数のNEV対応専門学校として知られている。従来のガソリン車の整備とは全く異なる、次世代自動車技術の核心となる「三電(駆動用バッテリー、駆動モーター、コントローラー)」に特化した高度な教育カリキュラムを持っている点が最大の特徴だ。
本研修で講師を務めたのは、同校チーフ・トレーニング・インストラクターの孫立偉氏だ。長年にわたり中国北京で自動車整備技術の教育と教材開発に従事し、最新の車両診断技術やNEV教育において中国北京の自動車整備教育業界における第一人者と言われている人物である。同社による日本での研修は、今回が初の開催となった。

Tesla Model 3を用いた実践的なカリキュラム
2日間にわたるカリキュラムでは、次世代自動車整備における4つの核心が示された。
第一に最も重要な点としてフォーカスされたのは「安全操作」だ。絶縁手袋やゴーグルなど防護具の着用、金属類の取り外しといった基本から、電源遮断後の10分間の待機、確実なゼロボルト確認(検電)など、命を守る厳格な手順が徹底された。
第二に「バッテリー構造」について、Tesla Model 3に採用されるリン酸鉄と三元系の2種類のバッテリーの違いや、多数のセルが直列・並列に繋がる内部構造が解説された。
第三のポイントとして解説された「高電圧配電システム」では、高電圧がバッテリーからモーターやエアコン等へどのように配電されるのか、その経路と仕組みを学習した。
最後に「駆動モーターと制御」として、同期モーターと非同期モーターの特徴や、アクセル・ブレーキ等の操作信号が、どのようにモーター制御に結びつくのかという論理を体系的に学んだ。座学だけでなく、実車と専用の診断機を用いた実践的な知識が共有された。


日本の整備事業者がこれから取り組むべきマイルストーン
北京でのNEV普及率は、新車販売シェアで約8割と非常に普及が進んでおり、整備の現場では高電圧バッテリーをセル単位で交換・調整するなど、日本の常識とは全く異なる前提条件でビジネスが動いている。
またその他にも、BEV特有の重い車両重量と強力なトルクに起因する足回り関連ビジネス、EV化よりも先行して進行するADAS(先進運転支援システム)のキャリブレーション関連ビジネスなど、自動車の進化に伴う新たなビジネスのヒントに触れることもできる。
一方で、日本国内におけるEV新車販売シェアは3.2%程度に留まっており、中国と比較すると10分の1以下と、その普及速度は緩やかだ。だからこそ、中国の真似をして闇雲に大規模な投資を行うのではなく、自社の地域特性に応じたマイルストーンを設定することが不可欠である。重要なのは「今、自社ができる一歩」を戦略的に踏み出していくことなのだろう。

