1974年5月、それまでのビートルに代わるVWの主力車種として登場したのが『ゴルフ』。だがその直前……というより僅か2か月前の同年2月に発表されたのがこの初代『シロッコ』だった。
2400mmのホイールベースでもわかるとおり、このシロッコはゴルフと共通のメカニカルコンポーネンツを使って生まれたハッチバック型のスポーツクーペ。位置づけは、ビートル時代のカルマンギヤの後継車に当たるモデルだった。
全高はゴルフの1410mmに対してちょうど100mm低い1310mmと低く、クサビ型の小粒ながら実にシャープなスタイリングを特徴とした。デザインはゴルフ(と上級車の『パサート』)とともにG・ジウジアーロが手がけたのはよく知られているところ。
インテリアは基本的にゴルフと共通のインパネがやや低くセットされ、専用デザインの3本スポークステアリングホイールを装備。乗車定員は4名で、リヤシートは+2とし、もちろん背もたれを倒すことでラゲッジルームの拡大が可能だった。
日本仕様は1976年の登場。エンジンは1470ccキャブレター式と1588cc・Kジェトロニック(76~77年式)、1457cc・Kジェトロニック(78~79年式)、1588cc・Kジェトロニック(80年式)、そして53年排ガス規制適合の1715cc・フルトランジスターイグニッション付き(81年)と変遷。
途中78年式のマイナーチェンジモデルからはフロントのウインカーランプがサイドまで回り込ませたものとなったほか、前後バンパーも樹脂製で大型化された。
余談ながら筆者は後期型の80年式を自分のクルマとして乗った経験があり、さらに後年、この初代シロッコのスタイルの生まれ変わりとしか言いようがなかった『コラード』が登場すると、抗えず、その「VR6」にも乗った。