ロールス・ロイスは「顧客の夢をかなえるためにある」 新店舗が注力する「ビスポーク」への想いとは | CAR CARE PLUS

ロールス・ロイスは「顧客の夢をかなえるためにある」 新店舗が注力する「ビスポーク」への想いとは

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ロールス・ロイス ブラックバッジ カリナン ブルーシャドー
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  • ロールス・ロイス横浜ショールーム
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  • ニコル・モーター・カーズ代表職務執行者社長のミヒャエル・ヴィット氏
  • ロールス・ロイス・モーター・カーズ ヘッドオブビスポークアジアパシフィック&ヨーロッパのクリストファー・コーデリーさん

ロールス・ロイス・モーター・カーズの正規販売代理店、ニコル・モーター・カーズは国内初の最新CIに基づくショールームを横浜みなとみらい地区にオープン。そのお披露目には世界62台限定の『ブラックバッジ カリナン ブルーシャドー』が展示されたほか、本国からビスポーク責任者も来日し、同ショールームがビスポークを重視していることが伺われた。

◆新ショールームでお披露目された特別なロールス・ロイス

このショールームを「ラクジュアリーメゾン」と位置付けるのはニコル・モーター・カーズ代表職務執行者社長のミヒャエル・ヴィット氏だ。入口はロールスのグリルであるパンテオンを模したものとなり、その上にはスピリットオブエクスタシーが燦然と輝く。そして何よりも大きな特徴は、ビスポークのための特別な個室、「アトリエ」があることだ。そこにはレザー・ウールなどサンプルのほか、ウッドのトリムサンプル18種、クルマの形を模したカラーサンプル160種類(以上現時点数で、今後変化する可能性あり)をはじめあらゆるものが用意され、これらとデジタルのコンフィギュレーションによって、特別なロールス・ロイスを作り上げることが可能なのだ。

そして、日本初お披露目されたブラックバッジ カリナン ブルーシャドーについて、ロールス・ロイス・モーター・カーズ ヘッドオブビスポークアジアパシフィック&ヨーロッパのクリストファー・コーデリーさんは、「ブルーシャドウは宇宙の無限のパワーからイメージ。同時にブラックバッジも無限がテーマなので、そこにブランドとの共通性がある」とコメント。

エクステリアの特徴は、サテンブラックに仕上げられたグリルとバンパー左右のインサートだ。これは、「宇宙船のノーズ部分や尾翼に使われる耐熱性のサーマルタイルからインスピレーション」されたもの。スピリットオブエクスタシーも3Dプリント技術を使用したチタン製で、そこにブルーのラッカーで仕上げられた特別なものだ。

ボディカラーはスターダストブルー。シャンペンとブルーの2色のクリスタルが配合されたカラーで、自然光の下では神秘的な空に輝く星のような効果を生み出している」という。

更にインテリアでは、「フェイシア(インパネ)は地球を宇宙から見た時の地球のカーブを表している。この効果を出すために5層のペイントで塗装。その上に1層のクリスタルのラッカーを施すという非常に難しい技術を採用。このラッカーによってスターライトの輝きを表現した」と述べる。

ロールス・ロイスとして初めて採用したのが開発を5回やり直したというシート柄だ。このアートのようなシートデザインには、「パンチングが施されており、地球を宇宙から見た様子が描かれている。パンチングは7万5000個開けられ、その大きさは0.8mmと1.2mmだ」。

そしてスターライトヘッドライナーは白と青い星があしらわれるとともに、グッドウッドのスペシャリストによって刺繍が施されている。実際には刺繍の一針一針を縫う手作業をプログラミング。結果として25万のステッチを施した刺繍が完成した。

なお、限定62台の意味だが、地球の大気圏が終わり、宇宙空間が広がる海抜高度62マイルに便宜上引かれているカーマンラインからとられているというように、全てが宇宙からテーマを得て開発されたものなのだ。

◆一台一台が会話の積み重ね

ロールス・ロイスがあえて横浜ショールームオープンにブルーシャドーを展示したり、ビスポーク専用のアトリエを設置したりする意味は何か。コーデリーさんに聞いてみると、「ロールス・ロイスのクルマは1台1台がいってみればビスポークです。ただそのレベルは違っており、コミッションコレクションからプライベートコレクション、その最たるものがコーチビルドです。特にAPAC(アジア太平洋地域)ではビスポークは凄く成長しており、中でも日本では独自のものが欲しいという思いのお客様がすごく多いのです」とコメントするように、日本市場においてビスポークの重要性を本国でも感じており、その結果が今回に繋がったのだ。

そのビスポークチームを率いるコーデリーさんはなぜロールス・ロイスの、しかもビスポーク部門に入ったのだろう。「ずっとラグジュアリー業界で働いてきており、最初はヨットの会社でした。その後ロールス・ロイスに入社したのですが、最初はアメリカ向けのセールスを担当し、そしてビスポーク部門を拡張する際に、ヨットとビスポーク部門との親和性が高いことから異動しました」とのこと。その親和性とは、「ヨットも業界外の技術を見ながらお客様のビジョンを実現するのと同じように、ビスポーク部門もグッドウッド(ロールス・ロイスの本社工場)で使っている技術以外の外の技術も取り込んで、お客様の心の中にあるデザインを正しい技術を使って実現しているところ」とこれまでの経験が生かせることを重視していた。

この部署でコーデリーさんが重きを置いているのは、ユーザーの夢の実現のために話をする時間をたっぷりとることだ。「まずお客様が持っているいろいろなビジョンを聞き出し、お客様のライフスタイルを含めてどんな人なのかを理解していくことから始まります。そして、お客様の好みをその話を通しながら把握し、そのうえで、過去の例などを見てもらいながら、ある程度の方向性を見つけていくことが多いです」。例えば、「フェイシアの化粧板をサンドブラスト仕上げにしたいのか、それとも寄せ木細工にしたいのかなどのアイディアを聞いていくのです」と述べる。

そして方向性が理解できたところからは、「私とデザイナーたちとで密接に協力しながらそのお客様の夢を実現するために、自動車以外も含めて多くの技術やアイディアのリサーチに時間を費やし、いかにクルマに反映できるかを探っていくのです」。

コーデリーさんは、「ロールス・ロイスで仕事をするということは、ほかのブランドとは違います。私たちはただクルマを売るのではなく、お客様を知って、そしてそのお客様のビスポークを作ってくことだと理解していますので、たった30秒くらいお客様と会話するだけでは終わらず、お客様との会話を積み重ねていくのです」とコメントした。

◆「私たちはお客様の夢を実現するためにいます」

さて、今回日本で初公開されたブラックバッジ カリナン ブルーシャドーはプライベートコレクションと銘打つビスポークのひとつだ。これはどういうものかを聞いてみると、「まずコミッションコレクションというものがあります。これは、ショールームのアトリエにある塗装やレザーなどのサンプルなどを組み合わせながら、オンラインのコンフィギューレーターを使って仕様を決めていくものです。そしてコミッションコレクションは、ブランドと関係したストーリーが背後にあるもので、例えば今回は宇宙、無限ですね。しかも一度きりの新しい技術を使っているものです。この位置づけとしては、こういうものにしたいというビジョンがなかなか思い浮かばないお客様に向けて、独自のクルマを持つためのひとつの方法といえます。そして一度こういうものを持ってみたら、今度はこういうクルマにしたいという自分なりのビジョンが見えてくるかもしれません。それからコレクターアイテムという位置付けもあります」とのこと。そこから様々な顧客のアイディアを実現するにつれ、まさにビスポーク、ワンオフのコーチビルドに近づいていくことになる。コーデリーさんは、「そういう要望にお応えするために私たちは完璧を追求します。このお客様の要望は(我々の)限界をより高めていく源となっています」と語る。

最後にビスポーク部門として最も大切にしていることは何だろう。「全てのプロジェクトを最善で、最大の注意を置いていくことです。それが世界でひとつしかないものを作る唯一の方法だと思っています」とコーデリーさん。

「私たちはお客様の夢を実現するためにいます。そのクルマは仕事から引退する記念かもしれません。お客様はすごく長い間どういうクルマにしようかと一生懸命考えていますから、それを作り上げる責任を我々は負っているんです。ですからお客様をサポートできるようにグループ全体で実現に向けて取り組んでいきます」とコメント。そうすることで、「世界中のディーラーがお客様と信頼関係を築けますし、その信頼関係はグッドウッドの工場にもつながって来るでしょう。このように長く続く関係に育てて行くことが大切なのです」と語った。

顧客一人一人とじっくりと時間をかけて話し、その夢を実現させていく労力は計り知れない。それを行えるロールス・ロイスというメーカーの実力とともに、ビスポーク部門の探求心には正直頭の下がる思いだった。常に自らハードルを上げそれを達成していくパワーの源は、顧客の夢のために他ならない。そうすることで強固な絆が育まれ、再びビスポークしたロールス・ロイスに乗りたくなるのだろう。

《内田俊一》

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