東京オートサロン2024のトヨタGAZOOレーシングブースで、「モリゾウ」こと豊田章男会長がプレスカンファレンスを行った。その中で、新たなエンジン開発プロジェクトを始めるという発言があった。
豊田章男氏は、昨年のオートサロンにも毎年年始に米国で開催される先端テクノロジー展「CES」から駆け付けてサプライズ参加している。レーサー、ラリードライバーとしての「モリゾウ」として、モータスポーツやカスタムカーへの思い入れは業界一と言っていいだろう。今回は、トヨタ自動車の社長、自工会の会長という職も離れ、車を愛するいちユーザーとしてスピーチに臨んだ。
そのため、プレスカンファレンスではなく「モリゾウからの新年のご挨拶」として、自身の車に対する想いを語っていた。ステージ上の車両は、コンセプトカーや新型の競技車両ではなく、章男会長の愛車『GRカローラ』、『iQ』、スズキ『ジムニー』、ヤマハ『ビーノ』まで合計6台を持ち込んで展示していた。
スピーチでは、能登半島地震や飛行機事故に触れ、「いまこそ対立や分断、争いや誹謗中傷をやめてお互い助け合うとき」と主張する。そして「日常と笑顔を取り戻せるように550万人の仲間とともに行動したい。オートサロンはクルマ好き集まり笑顔に包まれるお祭り。この笑顔が自動車産業の元気につながる」とした。
その上で、「モリゾウ」は2024年のラリーやレースに参加すると明言する。地域の子供たちにも自動車の楽しさを伝える活動も続けるという。
モータースポーツやクルマの楽しさの啓発は、社長や業界団体の代表という立場では抑えた活動しかできなかったのかもしれない。今回のオートサロンでは、ほんとうにやりたい活動をこれから取り組むという意思表明にも見えた。それはプレゼンの中で「ようやく私は“普通のクルマ好きのおじさん”に戻ることができた」という発言によく表れていた。
モリゾウ曰く、「最近はエンジンに携わる人たちは銀行融資が受けにくいことがあるらしいが、そんなことは絶対あってはならない」と力説する。エンジンにはまだ役割があるともいい「エンジン技術にもっと磨きをかけるプロジェクトを立ち上げた」という。トヨタ自動車の佐藤恒治社長や経営幹部も共感し、プロジェクトが発動した。
ただし、今回はプロジェクトの発表のみで詳細については「後日、発表していく」(広報部)とのことだ。単なるCSR的な取り組みなのか、製品に生かすための次世代エンジンなのか、現時点では規模、予算、目的なども不明だ。だがモリゾウは「エンジンを作ってきた皆さんの仕事を絶対に無駄にはしない」とも述べている。ガソリンからバイオ、e-Fuel、水素まであらゆる燃料に対応する夢のエンジンなのか、正式な市販車水素エンジンのプロジェクトなのか。非常に気になる発言だった。