ブリヂストンは8月29日、同社イノベーションパークで「ソーラーカーサミット2023」を開催。10月に豪州で行われる「ブリヂストンソーラーカーレース2023」に参加する東海大学や工学院大学、技術支援を行うメーカーやスポンサーなどが集まり、未来のクルマについて考えた。
ブリヂストンソーラーカーレースは2年に1度行われる世界最大級のソーラーカーレース。豪州北部のダーウィンから南部のアデレードまで約3000kmを約5日間で走破する大会だ。
ブリヂストンのモータースポーツ部門長の堀尾直孝氏は、会の冒頭、世界最高峰のソーラーカーレースであるブリヂストンワールドソーラーチャレンジを、「極限への挑戦を通じて、未来のモビリティ人材を育て、次世代の革新技術を生み出すオープンプラットフォームである」と位置付け、「モータースポーツ文化を支え、持続可能な社会の実現を目指したい」と挨拶。
東海大学工学部機械システム工学科の木村英樹教授は、ソーラーカーの開発がどのようにして進められてきたのかを解説。太陽電池やモーターの変換効率向上やボディの軽量化、コンピューターを駆使した空力開発などそれぞれの項目について説明し、市販車などに活用されている電気二重層キャパシタや低転がり抵抗タイヤなどの実例も示した。
ブリヂストン・モータースポーツ開発部門 MSタイヤ設計第1課の木村由和氏はブリヂストンソーラーカーレースにおけるタイヤ開発を、独自の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を駆使して、全般的に性能を向上させながらも、低転がり抵抗と耐摩耗性能、軽量化、耐パンクに特化してエッジを効かせた「究極のカスタマイズ」を行なっていることを紹介。再生資源・再生可能資源の使用比率を前回大会の30%から63%にまでアップさせたり、100%カーボンニュートラルな輸送を実現したことなど、サスティナビリティへの取り組みについても触れた。
東レ・カーボンマジックの奥明栄社長は軽量化技術について話し、「当初はマラソン競技のような重厚なサスペンションとボディだったものが、1つひとつの部品が軽量化され、車体重量はかつての5分の1ほどになっている。そのため、非常に細やかな設計が必要になっている」と開発の難しさを語った。
クロストークセッションでは、レースのスタート当初は8平方メートルのソーラーパネルで60km/hほどだったものが、現在は4平方メートルのソーラーパネルで2馬力にも満たないパワーで90km/hを実現しているなど、発展ぶりについて話す一方で、一般にソーラーカーが普及するには現状では難しいという意見が多数で、ソーラーカーの活用方法としては低スペードレーンの設置や他のビジネスやサービスとの組み合わせがカギになるとの見解を示した。
サミットに続いて、東海大学の参戦体制発表会が行われた。レギュレーションの変更ポイントを説明し、今大会から選択できるようになった3輪(以前は4輪のみ)のマシンで挑むことを表明。3輪は安定感には欠ける反面、重量を軽くでき、後輪を1輪にすることで空力的にもメリットが生まれるという。
学生代表の宇都一朗さんは、現在大学院2年で4年前の前回大会を知る数少ないメンバー。当時は10分ほどの差での悔しい準優勝だったこともあり、2011年以来の優勝を誓った。