2023年3月末、“Nシリーズ”の累計販売台数が11年3か月で350万台を突破。そのうち『N-BOX』は2022年度の登録車を含む新車販売台数で2年連続第1位、軽4輪車では8年連続首位の快挙を成し遂げた。そこで今回はそんなN-BOXの初代にスポットを当ててみたい。
◆クリーン&クールな新世代の軽を予感させた
“New Next Nippon Norimono”。カタログ上の実際の表記はすべて大文字だが、それまでのホンダの軽自動車のラインアップの一新を図るシリーズの第一弾として登場。初代N-BOX以降、『N-BOX+』(2012年)、『N-ONE』(2012年)、『N-WGN』(2013年)、『N-BOX SLASH』(2014年)とシリーズは拡充された。いずれもカタログは、白地に黒で車名ロゴだけを配した表紙(後にクルマの写真が入るようになる)で、いかにもクリーンな新世代のクルマであることをアピールする仕立てだった。
N-BOXは登場時で言えば人気車だったダイハツ『タント』の競合車として誕生。ところがいかにもホンダらしかったのは斬新なエンジニアリングが盛り込まれたこと。とくに車両レイアウトでは、コンパクトなノーズ部分に収まる新開発のエンジン、CVTを採用、さらに前席下にガソリンタンクを配置するセンタータンクレイアウトの採用で、後席の居住スペースを大きくとった。
この後席についてカタログでは、身長125cmの男の子が立って着替えているカットが採用され、併せて室内高140cmのスペックも示されている。なお同車のLPL(開発責任者)は、後にF1の総指揮官を務めている。
カタログで示されている数値はほかに運転のしやすい140cmの目線、自転車などの出し入れもしやすい48cm(FF車)の低床、開口幅64cmのスライドドア部なども紹介されている。形容詞を使って言葉で説明するのではなく、数値で伝えているところがいかにもクールだったというべきか。
クールといえばデザインもそうだった。細工に頼らないおおらかでシンプルな外形デザイン、クリーンなイメージのライトベージュのインテリアは、それまでの軽自動車とはひと味違うスマートさだった。一方で市場要求に応えるべく、黒地の表紙の別カタログまで用意されたのがN-BOX Customで、こちらはスポーティなブラックのインテリアとし、ターボモデルも用意していた。