カーライフに関係した「社会・経済トピックス」を横断的に発信している当コーナー。今回は、昨年の5月の道路交通法の改正により導入された「サポートカー限定免許」についてリポートする。
ところで、「サポートカー限定免許」なるものの存在を知らなかったというドライバーも少なくないに違いない。
なのでまずは、これが何なのかを説明したい。これはその名のとおり、運転できるクルマの範囲を「サポートカー」に限定するというもので、個人の意志により申請にて当条件を免許に付与できる(普通免許のみ)。なおここでいう「サポートカー」とは、「衝突被害軽減ブレーキ(対車両、対歩行者)」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」が搭載された車両のことを指す(具体的な車種は警察庁のHPにて要確認)。なお、後付けの装置は対象にならない。
さて、このような限定条件を免許証に付与できる制度がスタートした理由とは…。簡単にいうと、「免許証の自主返納に変わる選択肢を設けるため」だ。
高齢運転者の運転操作ミスによる事故が後を絶たず、その対策として免許証の自主返納を促す取り組みも行われている。しかし日本のほとんどの地域ではクルマに乗れなくなると暮らしの質が下がってしまうので、返納をためらう高齢運転者も多くいる。
「サポートカー限定免許」は、そのような悩みを抱えている高齢ドライバーにとって新たな選択肢となり得るものだ。当限定条件を免許に付与することで、免許を返さずクルマに乗り続けられるようになるからだ。そしてクルマに乗り続けることに反対する家族の理解も得られやすくなる。第一、自分自身でもより安心してクルマに乗れる。
とはいえ、実際のところこれを選択している高齢運転者はまだまだかなり少ない。警察庁が2月9日に発表した資料によると、昨年末時点での当限定条件を免許に付与した人の数は、全国で「14人」にとどまっている。
普及が進まないのは、これを申請するメリットが少ないからだろう。わざわざ運転できるクルマの範囲を狭めることになるわけで、また当限定条件を付けた後に「サポートカー」以外を運転すると違反にもなる。
そして最大の障害は、「クルマを買い替える必要性に迫られること」だろう。愛車がそもそも「サポートカー」であれば問題ないが、そうでなければ購入するしかない。ちなみに、高齢者はローンが通りにくいという側面もある。補助金制度でもあれば話が変わるのかもしれないが現状では何ら優遇措置はなく、この点は大きなハードルとなっている。
高齢運転者の運転操作ミスによる事故を減らすための一助となることが期待されてスタートした当制度。しかし課題があることも事実のようだ。当制度が今後どのように浸透していくのか、効果に期待しながら推移を見守りたい。