トヨタ紡織がCES 2023で提案したのは、将来の自動運転を想定した車室空間だ。ブースでは「MaaS(Mobility as a Service)」社会に向けた車室空間ソリューションとして2タイプのコンセプトカーを披露した。
◆2030年の自動運転ライドシェアを想定した『MX221』
その一つが2030年の都市内走行を想定したレベル4の自動運転ライドシェアモビリティ『MX221』である。開発のキーワードは「Diversatility」。これはDiversity(ダイバーシティ、多様性)とVersality(バーサリティ、可変性)を組み合わせた造語で、老若男女の多様なニーズに応えられる車室空間としたのがポイントになる。
トヨタ紡織では、30年頃にはマイカーとしての所有が減り、スマートフォンで呼び出せるロボタクシーによる自動運転のライドシェア利用が着実に増えると予想する。その際の実現するであろう、運転席を必要としない新時代の車室空間を柔軟に活用し、快適に過ごせる設備と技術をMX221に盛り込んだという。
ではMX221でどんなことが展開できるのかというと、まずシートなどの設備と機能を、利用状況に合わせて自在にシートレイアウトを変更し、脱着の自動化を実現した。たとえば車椅子利用者はこれまで、車椅子を固定するのにはベルトなどで固定するなど手間取る上に、安全性や安定性にも不安を抱えた状態で乗車してきた。MX221では専用の車椅子とリアシートの脱着システムを新たに開発してこの問題を解決する。
◆『MX221』はどんなことができるのか?
具体的には、この車椅子を利用して車両を呼ぶと到着時には自動的にスロープが迫り出して、利用者はそのまま乗車できる。そして、車椅子の後部に取り付けられた固定装置で確実に取り付けられるのだ。そのため、走行中も安定性が高く快適に過ごすことができ、万一の衝撃にも十分耐えられるという。
また、「テイラードスペースシステム」と呼ばれるシート/内装の脱着交換機能により、シートは車両後方から簡単に入れ替えができるサービスにも対応する。専用の無人搬送車が車内のオートスライドレールからシートを搬出し、代わりに新しいシートをレールに乗せて搬入するもので、利用者のニーズに応じてシートが自在に入れ替えできるのがポイントだ。これは利用者のニーズに応じて車内のグレードを変更できるサービスとして提供され、MX221では3つのグレードを用意した。
この3つのグレードのうち、“極上の移動時間”をテーマとする最上位の「MX PRIME」を体験した。
乗車時にはエアカーテンによって乗客の身体に付着したゴミなどを落とし、車内は常にモニタリングされて清潔に保つ効果も施される。そして、着座すると“クラウドスイングシート”と呼ばれる、見るからに高級なパーソナルシートでゆっくり揺すられる。これは赤ん坊の揺りかごをイメージして開発されたそうで、それはまるで「雲の上に浮かんでいるよう」と表現できる。アロマ機能による軽い香りも伝わり、そのまま座っていれば気持ちよく眠りに入れるだろう。
◆完全自動運転時代での商用利用を想定した『MOOX』
もう一つが完全自動運転のレベル5時代において商用利用を想定した『MOOX』だ。この試作車は、以前よりトヨタ紡織が観光用途としてCESへ出展していた車両の発展系となる。
車両にはテイラードスペースシステムが組み込まれ、柔軟に内装を入れ替えできるシステムを採用。これによって移動販売車から、会議室、レストラン、遠隔医療など様々な用途を見込む。会場に用意された試作車はウェルネス体感仕様車として出展された。シートには疲労・ストレス度を推定する機能が組み込まれ、搭載デバイスを駆使することで乗員をリラックスさせるウェルネス空間をもたらすというものとなっていた。
この日のデモは、シートに座って側面にあるセンサーを握ることからスタート。疲労度やストレスを3段階で測定し、その結果は車窓を兼ねる透過式ディスプレイに表示される。そしてその状況に合わせて癒やしの映像が流れ、3Dサラウンドを駆使した音とともに香りや振動、振動を組み合わせた効果がもたらされてリラックスできる状況をもたらす。最後にはディスプレイ全面でジェスチャー操作による簡単なゲームで気分をリフレッシュされてくれた。