ADAS「ドライビングサポート機能」の評価は、数値化しづらい…スバルの試み | CAR CARE PLUS

ADAS「ドライビングサポート機能」の評価は、数値化しづらい…スバルの試み

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アイサイトX:渋滞時ハンズオフアシスト
  • アイサイトX:渋滞時ハンズオフアシスト
  • アイサイトを装備したスバル・クロストレック新型
  • 運転支援システム「アイサイト」搭載車の世界累計販売台数500万台を達成
  • スバル・アイサイトのステレオカメラ
  • スバル・アイサイトのステレオカメラ(車内)
  • アイサイトX:アクティブレーンチェンジアシスト
  • アイサイトX:カーブ前減速
  • アイサイトX:料金所前減速

SUBARU(スバル)は8月末日、オンラインにて事故低減に向けた取り組みについて、発表を行った。内容は、アイサイトの実績や、実際のユーザー評価、工学的根拠に基づく運転負荷に関する調査の結果などが報告された。

◆はじめに

スバルの事故低減の取り組みの歴史は長く、特に現在のアイサイトにつながる技術は、1989年まで遡り、30年以上の歴史がある技術だ。2022年6月にはアイサイト搭載車が世界累計販売台数で500万台達成した。

今回の発表のポイントは、ドライビングサポート機能の評価を数値的に行い、可視化したという点にある。なぜなら、アイサイトをはじめとするドライビングサポート機能の評価は、体感によるところが大きく数値的な評価はしにくいという特徴があるからだ。

◆安全予防に関する取り組み

スバルは、アイサイトを中心に、2030年死亡事故ゼロを目指している。アイサイトは、ステレオカメラに拘り、スバルの持つ航空機メーカーのDNAや、安全を最優先に考える思想も加わり、設計・製造されている。

実際の統計データで、アメリカ市場での事故死亡率は約50%、事故死亡率の低い日本市場でも、死亡率は約10%低い数値を持っていると発表された。さらに、アイサイトの有無により、人身事故が約61%減、追突事故84%減と、自動化安全技術の証明と、SUBARU Lab所長の柴田氏は語った。

アイサイトの仕組みを簡単に解説すると、三角測量を原点とする技術だ。2つのカメラで、対象物までの差異を図り、距離を測定する。さらに、レーダーを用い、周囲の環境を読み取っていくのがアイサイトの仕組みになっている。

さらに柴田氏は、アイサイトが用いるカメラは、周囲に何があるか認識することが得意であり、レーダーは距離測定が得意という合わせ技のアイサイトは、今後さらにAI技術の導入を検討して、進化を目指している。例えば、AI技術を加えることで、道路の走行可能域を認識する。そうすることで、走行ラインの補助機能の精度もより向上する、といった具合だ。

こういった処理を、クラス分類というが、センサリングした結果を、道路、他車、障害物などに分類することをいう。ただし、AI技術の抱える問題点として、データを積み上げていく学習段階では精度が低くなってしまうという点があると語った。

最後に柴田氏は、こういった技術で重要なポイントは、みんなに使ってもらうことが重要という。
結局、360度カメラや、全方位監視などをしたところで、車両が高額で手の届かないものになってしまったら、本末転倒で、コストと安全のバランスが大切ということだ。

◆事故の特徴とアイサイトXユーザーテスト

事故を回避するためのドライビングサポート技術で大切なのは、普段起こる事故の特徴をよく理解する事といえる。そのため、アイサイトも事故調査データを参考に作られている。

今回アイサイトの評価を行ったU'eyes Designの梶川氏は、ITARDA(交通事故総合分析データ)では、認知による事故は50%を超え、次いで判断、操作と事故原因になっている。人間が運転をする時、認知、判断、操作を断続的に繰り返す必要がある。そもそも、人間はミスをするもの、人間の能力には限界があるという認識を持つことが大切と語った。

補足では、交通事故の多くは、前方の事故が多くなっている。そのため、アイサイトは、周囲の確認も行うが、前方の安全確保に重点を置いて開発されている。

そして、今回の発表の目玉となるのが、アイサイトXユーザーテストの結果発表だ。ユーザーテストは、スバルオーナー10名、年代、家族構成もまちまちなユーザーで行われた。コースは、東京都内の池尻大橋から、静岡県の御殿場まで往復の約180kmを想定、高速道路で行われた。

ドライバーには、視線を記録するカメラが装着され、腕にはスマートウォッチによる心拍などの監視、自動車搭載のCANデータによる操作時間の記録、ストレス唾液検査など、細かく数値が記録された。

その結果、アイサイト利用時は、前方注視の時間が短くなり、遠方や周囲の確認をする時間が増えた。操作時間は、約8500秒から約1500秒まで、82.7%も時間が短くなった。精神負荷も、渋滞時約61%、順調時約48%も軽減されているという確認が取れたと発表された。

補足説明では、前方注視の時間が短くなったのは、運転に対して余裕が生まれ、自然と周囲を確認するようになったからだという。その運転に対する余裕が、精神的負担、ストレス軽減につながったのではないかと分析もした。これによって、快適な運転体験を長く維持でき、ロングドライブの実現にもなるという。

◆まとめ

最後にADAS開発部主査兼自動運転PGM主査丸山氏が、「ADASは、衝突回避、疲労軽減の2本の柱で研究開発を行っている。しかし、衝突安全は、恩恵を受けることは少ないし、疲労軽減は、体感的なところで、数値化が難しい。今回は、そのテストで数値化ができたので、スペックに注視したモノづくりではなく、人間を中心とし、使いやすい、使っていきたいと思われるような機能に仕上げていきたい」と語った。

さらにスバルでは、AIが加わったアイサイトを今後開発していく意向だ。これについて柴田氏は、自動車づくりの変化をしていきたいと、語った。特に印象的だったのは、「プレーヤーが変化している」という言葉だった。

合わせてこう続けた。「今まで自動車にかかわりが無かった人にも、参加してもらいたい。これまでの自動車開発は、閉鎖的だったと思う。そうやって仕組みから変えていかないと、世界的な、競争力、開発力が強くならない。新しいことに挑戦する事、柔軟性、広い視野が重要だ」。


ドライビングサポート機能の評価は数値化しづらい…スバルの試み

《レスポンス編集部》

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