半導体不足による新車の納期遅延などを背景にクルマの長期保有化が進んでいる。平均車齢は8.84年となり、1台のクルマに長く乗り続けるユーザーが増えている今だからこそ、愛車の長期保有に有効でリセールバリューにも関わる「下廻り防錆(ぼうせい)」に着目したい。
クルマがサビる主な原因は、飛び石による小キズや酸性化した雨水、海水や潮風、糞害の放置などが一般的といえるだろう。積雪エリアにおいては、雪を溶かすために大量に散布される凍結防止剤(塩化ナトリウム)や融雪剤(塩化カルシウム)といった “ 塩 ” がサビの原因となり「クルマの塩害」として以前から問題視されている。
凍結防止剤や融雪剤が散布された道路を走行すると、車の下廻り(マフラー、サスペンションアーム、ショックアブソーバーなど)はもちろん、ドア下部、サイドシル、フェンダー、バンパーなどが塩まみれになり、そのまま放置するとサビを誘発してしまう。こういった状況があるため、塩害地域のカーオーナーは、サビ防止対策として新車購入時や車検のタイミングに、自動車ディーラーや整備工場などで「下廻り防錆」サービスを検討することになる。クルマのサビ防止対策ニーズは以前からあり、複数のメーカーが車体防錆剤を開発しているが、その特長や性能はさまざまだ。
ワックス系車体防錆コート剤「Jコート7」
化学メーカーの株式会社ダイゾー ニチモリ事業部では、プロ向けのワックス系車体防錆コート剤「Jコート7」を製造している。同製品の特長などについて、同社の東日本営業部 北関東営業所 所長の渡辺貴洋氏と椎名聡氏から話を聞くことができた。
同社では20数年前から車体防錆剤を開発しており、改良を重ねながら、自動車ディーラーや整備工場向けに提供している。現在の主力製品「Jコート7」は、防錆性や塗膜保持性、浸透性に優れ、融雪剤や海水、酸性雨などからのサビの発生を強力に防止。防錆剤のカラーは、ブラック(黒色)とナチュラル(半透明)の2色が用意されている。
椎名氏によれば、同製品を塗布したサンプルの塩水噴霧試験(一定温度が保たれた環境で霧状の塩水を吹きかける)では、1,000時間以上サビが発生しない防錆力を実現。ワックス系の塗膜が、外気から塩分や水分などを遮断し、低温下での塗膜剥離防止や紫外線などによる劣化に対して効果を発揮するという。また、ワックス粒子を微粒化し、薄膜でも優れた防錆力があるほか、塗膜に柔軟性があり、飛び石などで小キズがついても走行中の振動で残存塗膜が広がる自己修復性もある。
特に注目なのは、ダイゾー ニチモリ事業部ならではといえる「ジャバラシステム」で、防錆剤の使用量に応じて縮む “ジャバラ容器” を採用している。専用のスプレーガン(ジャバラ専用ガン・減圧弁付き)の噴射口にジャバラ容器をセットし、エアーコンプレッサーで防錆剤を吹き付ける仕組みのため、一定の圧力で安定した噴射が可能。専用ガン本体にはエアーのみが通るため、ガンを洗浄する必要がない。ジャバラ容器は360度どのような方向からでも噴射できるので塗装しやすい利点もある。また、3種類のノズル(フロア全般用:ショートノズル、足回り用:ロングアダプターノズル、ドア・ボンネットのインナー用:ロングノズル)があるため、水が溜まってサビやすい部分にも防錆剤を流し込める。
施工スタッフの健康面を配慮している点も大きなポイントで、エチルベンゼンフリーで、特化則(特定化学物質障害予防規則)と有機則(有機溶剤中毒予防規則)の適用を受けない環境対応型の防錆剤のため、安心・安全に施工できる。
ニチモリ事業部では、自社製品を導入している自動車ディーラーや整備工場に定期的にヒアリングを行い、使用感や要望を把握。「施工スタッフの方々が安全に作業できる防錆剤であることは大前提で、防錆性能を維持しながら、より自然環境に配慮したエコな防錆剤を開発したい」と北関東営業所 所長の渡辺貴洋氏は話していた。
なお、「Jコート7」の容器は、ジャバラシステムのほか、一斗缶とペール缶(ともに14kg)、補修用のスプレー缶もある。