全国の大学の自動車部が競う『全日本学生ダートトライアル選手権大会』が7月31日、栃木県のつくるまサーキット那須(旧・丸和オートランド那須)にて開催された。
◆未経験のコースに、大学自動車部の精鋭が挑む
気温が35度を超える炎天下での開催となった2022年の全日本学生ダート。「全日本学生自動車連盟」に加盟する全国の大学のうち、各地方の大会で好成績を残した14校が会場に集結した。
ダートトライアル競技は、ダートと呼ばれる未舗装路に設定されたコースを1台ずつ走行し、そのタイムを競う。学生の大会は男女別に分かれる「個人の部」に加えて、「団体の部」があることが特徴だ。男子は3名の選手の、女子は2名の選手のタイムが合計され、速いタイムを出した大学が勝者となる。
今回の舞台、つくるまサーキット那須は、2020年に改修が行われたことで砂利道とアスファルトの区間が混在する難しい路面になった。かつての丸和オートランド那須はハイスピードコースとして名を馳せたが、その性格は改修後も健在だ。また、今回のコースにはダート競技では珍しい360度ターンが設定され、未経験の部分をどのように攻略するかが鍵となる。
◆未だ現役のインテグラ、シビック、スターレット…
出走する車両は、JAFのSC車両規定に基づく、改造範囲が多少広いものだ。内装部品は軽量化のために外され、ロールケージや4点式シートベルトといった安全装備が装着される。DC2型のホンダ『インテグラ』で出場する大学が14校のうち7校と最多。EG型・EK型『シビック』が次いで3校と、ホンダ車が最大派閥となっている。
また、千葉工業大学などが選ぶEP82型トヨタ『スターレット』は、ブースト圧次第でどこまでもパワーを上げられるロマン性から根強い人気を誇る。扱いやすさから女子専用車両として採用する大学も多い。
20年以上も前のクルマが活躍する中、最も年式が新しいのは甲南大学が投入したZC31S型のスズキ『スイフトスポーツ』。車両の老朽化や本体価格の高騰により、前述のインテグラなどを用いて競技を続けることは難しくなってきている。スイフトスポーツはその廉価さから次世代の自動車部を担う車両になることが期待されており、実戦でのパフォーマンスに注目が集まった。
◆熾烈なタイムアタック合戦の結末は?
午前9時を回り、明治大学の男子第1走者から競技走行が開始。ダートトライアルは滑りやすい路面の上を、ドリフトなどのテクニックを駆使して駆け抜けるという、非常に“映える”競技だ。一方で、クラッシュや横転といったリスクも常につきまとう。無事にマシンをゴールに運ぶのは至難の業だ。
大会では各選手が2度の走行を行い、どちらか良い方の記録が順位となる。1本目を終えた段階では男女共に関東の大学が1歩リード。会場をホームコースとする関東勢が午後も逃げ切るか、強豪ぞろいの関西勢や中四国勢が巻き返すのか。
2本目の走行が始まると、1本目の走行で感覚を掴んだ各選手がタイムを続々と更新。ランキングボードが目まぐるしく入れ替わる展開となった。
男子の部では、1本目の時点で団体、個人共に早稲田大学がトップで折り返したが、中央大学の選手が立て続けにタイムを更新して個人ワンツー体制を構築。他方では慶應義塾大学の選手が個人ベストには届かないまでも、きっちり3名のタイムを揃えて団体順位でトップに立つ。しかし、最後の出走となった早稲田大学の第3走者が他の選手を1.48秒突き放すスーパータイムを記録。個人で逆転を果たした早稲田大学が、団体順位でも僅差で首位を奪い返し、勝利を飾った。
女子の部は、こちらも早稲田大学の選手が他の選手に3.86秒差をつけて個人の部を制覇。女子団体も早稲田大学が勝利する結果となり、男女団体・個人という全ての部門で優勝するという、早稲田大学自動車部の強さを見せつける大会となった。
自動車部の全国大会は年に3回開催される。次戦は8月21日(日)に三重県で行われる、全日本学生ジムカーナ選手権大会だ。