幼き少年のころ、ミリタリープラモに心を奪われた経験があるなら「ケッテンクラート」という名に、思わず反応してしまうことだろう。第二次世界大戦時にドイツで開発された、特異な姿が際立つ最小サイズのキャタピラ駆動バイク(小型牽引車)「ケッテンクラート」は、老舗の模型メーカー・タミヤからプラモデルが発売されているので、プラモ好きの間では有名だ。さらにハリウッド映画『プライベート・ライアン』をはじめ、漫画アニメ『シェイファー・ハウンド』や『少女終末旅行』、アニメ映画『ガールズ&パンツァー劇場版』、ゲーム『コール オブ デューティ ファイネストアワー』などにも登場しており、ミリタリーマニアの間では異型軍用メカの代表的な存在となっている。その「ケッテンクラート」の歴史から構造細部までを、徹底的に調べ尽くして一冊にまとめられた濃厚な情報を、日本語で読める『ケッテンクラート解体新書』が2011年(平成23年)に刊行されており、当時ミリタリーマニアの間で大きな話題となった。それから6年後の2017年(平成29年)に同様の内容で限定部数で再版されている。ミリタリーマニアのバイブルといっても過言ではない同書に、このたび新たな情報が追加された『ケッテンクラート解体新書 増補改訂版(月刊PANZER 6月号臨時増刊/第722号)』が、2021年4月14日(水)に発売された。増補改訂版では、補遺として「01:フロントフォークと前輪の役割」「02:ハーフトラックの操向装置」「03:ケッテンクラートのフロントフォーク詳解」を新たに収録。加えて、操向用および制動用ブレーキの動作機構(作図/佐藤元信氏、解説/佐藤元信氏・小林雅彦氏)について、細部までしっかり描かれた図版と解説が新たに追加されている。ちなみに、今回新たに執筆されたコラム記事5(P91/執筆:吉祥寺怪人氏)も注目だ。同コラムでは、2021年5月29日(土)ごろに模型メーカーのタミヤから発売予定となっている、1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.377『1/35 ドイツSd.Kfz.2 ケッテンクラート中期型』(www.tamiya.com/japan/products/35377/index.html)の関連情報が掲載されているので、ミリタリープラモ愛好家は要チェックだ。本書の魅力は「ケッテンクラート」の歴史やメカニズムについて、ふんだんな写真と図版で紹介されている点だけではない。著者の小林雅彦氏がケッテンクラートの実物車体を入手し、実動させるまでの5年にわたる「レストア日記」が綴られており、貴重な技術資料の側面もある。また、イラストルポで知られるモリナガ・ヨウ氏(早稲田大学教育学部地理歴史専修、漫画研究会在籍/第63回産経児童出版文化賞の大賞に選ばれた『築地市場 絵でみる魚市場の一日』をはじめ、『図解絵本 東京スカイツリー』『ワールドタンクミュージアム図鑑』の著者)のスペシャルエッセイや、戦場劇画の第一人者である漫画家・イラストレーターの小林源文氏によるスペシャルコミックも収録されている。なお、レストア日記やモリナガ・ヨウ氏のイラストエッセイ、小林源文氏のコミックは、2011年発行の初版と、2017年発行の再版にも収録されている。著者の小林雅彦氏についても紹介しておきたい。小林氏は、静岡県御殿場市で自動車整備・販売を行う「株式会社カマド自動車」(かまど717-6)の代表取締役を務めている。小林社長は、熱狂的なミリタリーマニアとして有名で、好きが高じて出版業も行っているのだ。これまでに、四駆道楽専門誌『CURIOUS(キュリアス)』や、旧日本陸軍が試作した幻の重戦車(オイ車)に関するムック本『日本の重戦車』など、多数の雑誌、書籍、ムック本を発行している。さらに驚かされるのは、日本初の防衛技術博物館の設立を目指して「NPO法人防衛技術博物館を創る会」を発足し、実現に向けて邁進されていることだ。2016年9月には約2年半の歳月をかけ、日本初の小型四駆「くろがね四起前期型」のフルレストア(復元)に成功。静岡で行われた完成披露イベントでは、地元のテレビ局や新聞社のほか、Webニュース媒体をはじめ、後日NHKで特別番組が放送されるほど大きな話題となった。このような活動に心血を注ぐ小林社長が執筆された『ケッテンクラート解体新書 増補改訂版』は、ミリタリーマニアをはじめ、プラモ好きの心を沸き立たせる濃厚でリアルな情報がたっぷり詰め込まれた至極の一冊といえるだろう。<目次>はじめに/小林雅彦◎SPECIAL ESSAY 35分の1スケールの迷宮物語出張版/モリナガ・ヨウ■ケッテンクラート その歴史とメカニズム 1938-1949 小型ハーフトラックの開発と生産 車両各部の機構と構造 操縦方法 生産時期による特徴■ケッテンクラート レストア日記 2006‐2011 非日常への招待状 STEP 1:車体入手~分解開始! 2006年10月~2007年3月 STEP 2:分解の続き~欠品部品の調達 2007年3~4月 STEP 3:再塗装~足まわりの組みつけ 2007年4~6月 STEP 4:操向装置の調整 2007年6~7月 STEP 5:展示に向けてラストスパート! 2007年7~10月 STEP 6:最終調整~完成! 2008年2~8月 STEP 7:レストアの道、そのゴールは……!? 2008年11月~2011年4月■KETTEN COLUMN [1]:世界のケッテン大集合! [2]:カタログでみるオペル・オリンピア [3]:国内にあるもう1台のケッテン [4]:伝説的四駆専門誌『CCV』最終号の試乗記を再録 [5]:中期型ケッテンがタミヤ35MMで新登場 [6]:チェコで出会った3台のケッテン [7]:初の1/32プラモデル その開発秘話を公開◎SPECIAL COMIC [Ketten in action クレタ島1941]/小林源文■ケッテンクラート フォトスクラップブック◎折り込み【表側】操向用および制動用ブレーキの作動機構/佐藤元信【内側】ケッテンクラート内部透視図/佐藤元信<著者・発行・価格情報>著 者:小林雅彦発行人:加藤 聡発 行:株式会社アルゴノート雑 誌:124ページ価 格:定価2,550円(本体:2,318円)ASIN :B091F5QK92<スタッフ情報>執筆・作画:小林雅彦構成・編集:吉祥寺怪人装丁・DTP:鈴木大亮(2011年・初版)DTP協力:吉祥寺怪人(2021年・増補改訂版)装丁協力:岩城人志(2021年・増補改訂版)表紙・折込・34~36P作画:佐藤元信33P作画:上田信寄 稿:モリナガ・ヨウ(P6−7 スペシャルエッセイ) 小林源文(P110 スペシャルコミック)撮 影:須永たつひと、株式会社インタニア協 力:株式会社カマド、株式会社SATマガジン出版、株式会社IFT(CCV編集室) ドイツ料理リンデンバウム、ユニフォトプレス、株式会社タミヤ 株式会社海洋堂、株式会社造形村、株式会社M.S Models、玉田哲也 Vollert Jochen-Tankograd Publishing、Vladimir Lehar レシャニー軍事技術博物館(The Military Technical Museum Lešany) Zibigniew Luczkow、Andreas Mehlhorn、KDF−Osnce(lvo Pospisil) Jaroslav Votik、Jaromir Michal Zajic、Rene Skupy、Jirka Vavra〈出版・編集関連事業に携わる方々へ〉御社で発行される自動車・モーターサイクルのリペアやメンテンナンスに関する書籍/雑誌の情報を当編集部までお送りください。カーケアプラスにて紹介させていただきます。送り先「〒104-0045東京都中央区築地3-3-2 NEWS築地9F 株式会社ジェイシーレゾナンス カーケアプラス編集部 宛」
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