吐く息は白く、寒さが身に沁みる12月某日の深夜、氷点下近くまで下がった長野県岡谷市のガレージの奥で、乾いた金属音が響く。かじかむ手をこすりながら、錆だらけのボディに何やら作業を施している一人の男。少しだけ眠そうな目でこちらを見上げ、笑顔でこう話した。“このサバンナをもう1度走らせるために、出来ることはすべてやる”力強さや躍動感などをイメージし、その名が付けられたというマツダ「サバンナRX-3」。その勇猛なイメージとあまりにかけ離れた、瀕死のサバンナの姿が2018年の1月、長野県岡谷市にあった。あれからおよそ2年。廃車同然だったサバンナは、一人の男の手によって昔、サーキットを轟かせたレースカーの姿へ、ゆっくりと少しずつではあるが、息を吹き返しつつある。廃車同然のマツダ「サバンナRX-3」に再びエンジンを灯し、走らせるという挑戦を編集部は『サバンナRX-3 復活の軌跡』と題し、連載記事として追いかけている。この挑戦に挑んでいるのは、長野県岡谷市で自動車販売・整備・修理を営む「郷田鈑金」の社長、駒場豊氏だ。自ら数多くの鈑金塗装を手がけており、中でもロードスターのレストアを得意としている。今回はボディの錆取りと並行して行われている、アンダーフロアの修復作業を中心にお伝えしたい。また駒場氏は、レストアの原点とも言えるある人物の存在を明かしてくれた。◆車体の基礎はアンダーフロア…土台を固め、いよいよ足回り、外装へ前回は穴だらけで、地面が見えていたアンダーフロアの床面。コロナ禍で思うように作業を進められない中でも、駒場氏が“車体の基礎”と話す土台部分は、見違えるような状態になり、外装の仕上げを待つ状態となっていた。このあたりはレストアの職人、駒場豊の本領発揮と言ったところか。◆オリジナルとは違うカスタムの魅力…その原点とは?今回のレストアが、オリジナルの再現ではないと話す駒場氏。その思いの原点とも言える1冊の漫画を紹介したい。1980年代前半に国産車のチューニングを扱った草分け的な作品として発表され、多くのファンを持つ 「よろしくメカドック」(作/次原隆二)だ。駒場氏の父、駒場稔氏がレース活動をしていた関係で、レーシングカーが側にある環境で幼少期を過ごした駒場氏。次第に「自分でこんなクルマを作りたい」という思いを抱くようになった小学生の頃、出会った漫画が「よろしくメカドック」だったという。またその作中に登場する「RE雨宮」の“ロータリーシャンテ”に衝撃を受けたと言い「クルマは自由な改造ができるんだと知るきっかけになりました。まさに自分の原点です。自分なりに整備や鈑金のスキルを学び、何十年を経て、まさか実際に“雨さん”とお会いすることになるとは…」と駒場氏は笑う。駒場氏が“雨さん”と呼ぶ人物…。日本のチューニング界において知らない人はいないであろう“チューニングの神”ー。※東京オートサロン2020@幕張メッセ 2020年1月撮影雨宮勇美、その人である。駒場氏のレストアの原点とも言える“ロータリーシャンテ”の生みの親、雨宮氏は、今年1月に幕張メッセで開催されたカスタムカーの祭典「東京オートサロン2020」で、駒場氏が手掛けた“もう一つの郷田鈑金50周年事業”「郷田RX-3」の出展に際し、自身のRE雨宮ブースの車両展示スペースを提供した。この「郷田RX-3」については下記記事も参考にして頂きたい。▼ハコスカに勝った「サバンナRX-3」が復活!レストア職人・駒場豊が手掛けたその名は「郷田RX-3」記事リンクはこちら→https://carcareplus.jp/article/2020/01/12/4823.html雨宮氏は今回のサバンナレストア企画にも賛同しており、エンジン製作に全面協力している。一体どんなエンジンなのか?次回は、雨宮氏が手掛けたエンジンの全貌および、錆取り、足回りパーツの移植などの様子をお伝えしたい。時間を掛けてゆっくりと…少しずつサバンナの眼差しが野生に戻る瞬間がやってくる。おまけ:ちなみに駒場氏、リアル開催は中止となった2021年のオートサロン出展に向けて、実はこんな車両のレストアにも取り組んでいた。この黄色い“サバンナワゴン”の続報にも乞うご期待!
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