クルマ中で使用する“音楽再生機器”について考察している当短期集中連載。その第5回目となる今回は、現代カーオーディオの“ソースユニット”の本命とも言える『スマートフォン』について、その利点から楽しみ方のコツまでを、じっくりと解説していく。■『スマートフォン』なら、車内に大量の音楽を持ち込める。クルマの中で音楽を聴こうとするとき、スマートフォンを“ソースユニット”として使っているドライバーは多いはずだ。使われる頻度が高くなっているその最たる理由は、「好きな音楽を大量に持ち込めるから」である。音楽好きの方ならば今でも大量にCDを所有しているはずだが、それをパソコン(ミュージックサーバ)に取り込んでパソコンの中で管理しているという人は多いだろう。そうすることで、家の中では“ネットワークオーディオ”を楽しめる。パソコンを“ソースユニット”として、再生、管理、音源の入手を合理的に行える。また、家の中から音楽を持ち出すことも簡単になる。『スマートフォン』がパソコンの中の音楽を持ち運ぶ“器(うつわ)”として機能し、しかも、大量の音楽を持ち出せるようになる。ところでその昔に『CDチェンジャー』なるものが人気を博した時代がある(古い話で恐縮だが…)。これは、1度に6枚とか、複数のCDをセットしそれを続けざまにかけることができるというユニットだった。『スマートフォン』はいわば、現代の『CDチェンジャー』としても機能するのだ。しかもかつての『CDチェンジャー』と比べて圧倒的に高性能だ。『スマートフォン』が車内で使われることが増えてきた理由は他にもある。その筆頭は、“音楽ストリーミングサービス”が普及したこと。定額で好きな音楽が聴き放題になるサービスだ。“音楽ストリーミングサービス”に加入しているのなら、これを車内でも楽しみたい。また、『スマートフォン』を“ソースユニット”とすれば、インターネットの動画サイトを音楽ソースとして活用することも可能となる。映像も車載機に映し出そうとすると条件が限定的となるが、少なくとも音声をカースピーカーから流すことは比較的に簡単に行える。普段から『スマートフォン』を使い倒している人ほど、これを車内の“ソースユニット”とする理由がたくさんある、というわけなのだ。■『スマートフォン』の音楽をワイヤレスで取り込もうとするときの便利アイテムとは?続いては、『スマートフォン』の“繋ぎ方”のいろいろについて考えていく。かつては、ポータブルオーディオプレーヤーを車内で聴こうとするときのもっともスタンダードな方法といえば、“FMトランスミッター”を活用することだったのだが、現在は『市販メインユニット』ならびに『純正メインユニット』においても、“AUX端子(外部音声入力端子)”、または“USB端子”が備えられているケースが増えているので、それらが使われることが多くなり、“FMトランスミッター”の出番はかなり少なくなっている。ただし、現代カーオーディオにおいても“FMトランスミッター”が重宝する局面がある。それは、車載機に“Bluetooth”レシーバーが備わっていないとき。そのようなケースで“Bluetooth”に対応した“FMトランスミッター”を用いると、『スマートフォン』と“FMトランスミッター”がワイヤレス(Bluetooth)で繋がり、“FMトランスミッター”と車載機間もワイヤレス(FM電波)で繋がる。『スマートフォン』の音楽を聴くのにコードが必要なくなるのだ。ちなみに今は、車載用の“Bluetoothレシーバー”も存在している。これを用いると、『スマートフォン』の音楽をレシーバーで受けて、レシーバーからはそれを“AUX端子”で取り込むことができるようになる。小型なので場所を取ることはない(スマートに取り付けようとすると多少工夫する必要は出てくる場合もある)。そして、音質的にも“FMトランスミッター”より有利だ。『スマートフォン』のワイヤレス導入を考えている方は、“Bluetoothレシーバー”を検討しても面白い。■『スマートフォン』を接続したときに、『スマホ』の操作を車載機側で行えるよになると…。ところで、『メインユニット』の中には、『スマートフォン』を“USB”で接続した際に、『メインユニット』側で選曲操作等を行えるようになる機種が多くある。その場合には、“AUX”接続をするよりも、“USB”接続を選択したほうが使い勝手が高まる。『スマートフォン』を車内で使うときに発生するデメリットを消すことができるのだ。というのも、運転中に選曲操作等を『スマートフォン』の画面上で行うのは、結構不便だ。画面を注視しないと実行したいボタンを正確に押せない。“シャッフル”モードで聴くことがメインであるならばそれほど操作性のことを気にする必要はないが、都度、聴きたいアルバムなりアーティストなりを選びたいとなれば、車載機側で操作できたほうがスムーズだ。また、『市販AV一体型ナビ』等の中には、“Bluetooth”接続したときに、車載機側で選曲や楽曲検索ができる機種も多い。そうであればこのときにも、『スマートフォン』を車内で“ソースユニット”として活用するときのデメリットが消える。ただ充電のことまで考えると、“USB”接続に分がある。“Bluetooth”接続を実行してワイヤレス化を図っても、充電しようと思えばケーブルが必要となる。それを考えたら、音楽信号も“USB”でやりとりしたほうむしろ、状況はシンプルだ。音質的にも“USB”接続が有利であるので、総合的な実用性は高いと言える。なお、“Bluetooth”の規格の1つに“LDAC(エルダック)”というものがある。これには、“Bluetooth”接続で“ハイレゾ音源”をダウンコンバートすることなく伝送できる、という特長がある。『スマートフォン』と『カーオーディオメインユニット』の双方で、対応機種はまだ限定的ではあるのだが、もしも“ハイレゾ音源”を高音質にワイヤレス伝送したいと思ったら、“LDAC”への対応も確認してみると参考になる。今回は、ここまでとさせていただく。次回は『DAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー』をカーオーディオの“ソースユニット”として活用することについていろいろな角度から考察していく。お楽しみに。