京都に本社を置く工具メーカー「KTC(京都機械工具)」の協力のもと、知っておきたい工具の基礎知識について紹介する。
本記事では、特徴ある見た目が印象的で、使用頻度も高く一度は手にしたことのある読者も多いであろう「めがねレンチ」をとりあげたい。
そもそもめがねレンチとは、ボルト・ナットを締め付けたり、緩めたりする工具のひとつでカタチが眼鏡に似ていることが名前の由来だ。
◆めがねレンチの正しい使い方
はじめに使い方について大切になるポイントを解説する。めがねレンチの正しい使い方を知れば作業の効率アップにもつながる。
まず、めがねレンチとボルト・ナットのサイズが合っていることを確認する。サイズが合っていないと、めがねレンチとボルト・ナットの間がぐらついてしまうのでサイズの合ったものを選ぶ必要がある。
サイズを合わせたら「手」でボルト・ナットを締めていき、ボルト・ナットが固定できるまで締める。次に固定したボルト・ナットにめがねレンチをはめ込み、回す。その時、ボルト・ナットのかかりが浅くならないよう片手をめがねレンチの先端に添え、奥までしっかりはめ込むことが大切になる。
最後にしっかりと締め込むことを忘れないようにしたい。
◆間違った使い方とは?
サイズが合っていなかったり片手で使用すると、めがねレンチとボルト・ナットのかかりが浅くなり、しっかりと締めることができなかったりボルト・ナットを痛めてしまうことがあるので注意が必要だ。
以下、使用する時に注意したい点を挙げるので、参考にして欲しい。
・ボルト・ナットのサイズに合ったものを選び、ボルト・ナットの上側からはめ込んで回す。
・めがねレンチはボルト・ナットのサイズに合ったものを選び、しっかり奥まで
差し込んで使用する。
・めがねレンチのサイズが大き過ぎてギャップがあると、ボルト・ナットの六角部がつぶれ、滑ったり外れやすく危険。
・ハンマー等でたたいて衝撃を加えない。
・パイプ等を継ぎ足して使用しない。
・ハンマー代わりには使用しない。
「間違った使い方」の動画では、めがねレンチがななめにかかり隙間ができている。この状態だと、めがねレンチが滑って外れたり、ボルト・ナットを痛めてしまうことがある。
◆めがねレンチとスパナの違い
スパナがボルト・ナットを2点でとらえるのに対して、めがねレンチは6点でとらえるのが特長。そのため、「スパナよりしっかり締める」ことができる。しかも、リング状になっているため頭部がボルト・ナットから外れにくく、均等に荷重をかけることができ、安定した作業が可能なのでおすすめだ。
◆めがねレンチの選び方
次はめがねレンチの選び方を学んでいこう。作業環境に応じた「柄部の長さ」と「角度」のものを選ぶのがコツ。ちなみに、柄の長さはロングタイプが一般的だ。
・オフセットタイプ
最も一般的なタイプで、大きなトルクもかけやすいことが特長。また、柄部がオフセットしている(曲がっている)ため、平らな場所にあるボルト・ナットに使う場合も、手の入るスペースが確保できる。くぼんだ場所にあるボルト・ナットにも使用可能だ。
・ストレートタイプ
オフセットタイプのめがねレンチでは入らないような、狭く奥まったスペースにあるボルト・ナットにも使用できる。特に大きな力で締め付ける必要がある場合は、超ロングタイプが適している。
◆用途によって角度や長さを使い分ける
今回、紹介したオフセットタイプのめがねレンチは、KTCのラインナップ。メーカーによっておすすめする角度や長さは様々だ。少し角度や長さが変わるだけで、格段に作業しやすくなることもあるので、用途によって使い分け、好みの工具を見つけたいものだ。
◆柄の長さとボルト・ナットを締める力の関係
工具は基本的にテコの原理を利用して、ねじを締めつける。そのため、柄が長ければ長いほど大きな力でねじを締めつけることができるようになる。
では、柄が長い工具だけ揃えておけばよいのでは?と思ってしまいがちだが、柄が長い工具は、その分広い作業スペースが必要となる。つまり、場所によっては使えないこともあるわけだ。また、強い力で締め付けすぎると、ねじを痛める原因にもなる。対象となるねじに“適した力”で締め付けることも大切なポイントだ。
◆めがねレンチのバリエーションとラインナップ/span>
めがねレンチには他にも様々なバリエーションがある。以下に、一部を紹介するので参考にして欲しい。
・ブレーキパイプ用めがねレンチ
自動車のブレーキパイプのフレアナットなどに使用するめがねレンチ。「フレアナットレンチ」とも呼ばれ、頭部先端が開いているので配管の途中にあるナットを回すことができる。
・ラチェットめがねレンチ(両頭首振りタイプ)
頭部にラチェット機構(一方向にしか回らない仕組み)を組み込んだめがねレンチ。レンチをボルト・ナットから外すことなく連続して回すことができる。
・板ラチェットめがねレンチ
板状の本体の両端にラチェット機構を組み込んだ口径部を備えたタイプ。大きな力をかけるには不向きだが、狭い場所の利用に便利。
以上、めがねレンチについて理解は深まっただろうか? 普段、何気なく使う機会が多いめがねレンチだが、意外と知らないことも多かったのでは?
これから、実際にめがねレンチを使う時には、今回の解説をぜひ思い出してみて欲しい。今までよりも、作業がずっと楽しく快適になるはずだ。今後もさまざまな工具の基礎知識について、詳しく紹介していくのでお楽しみに!