純正スピーカーの音に不満を抱いている方々に、スピーカー交換を強くおすすめする短期集中連載をお届けしている。その第7回目となる今回は、「3ウェイ」をテーマにお贈りする。このメリットから、リーズナブルな実行方法までをじっくりと解説していく。■カーオーディオでは「3ウェイ」が有利。その理由とは…。「スピーカー交換」をする際の選択肢の1つに「3ウェイ」がある。片側にツィーター、ミッドレンジ、ミッドウーファーと3つのユニットを使って低音から高音までを再生しようとするスピーカーレイアウト、それが「3ウェイ」だ。最初から「3ウェイ」を組んでもいいし、1度「2ウェイ」スピーカーを取り付けた後から「3ウェイ」にしても良い。まずは「3ウェイ」のメリットから解説していこう。本当ならば、1つのスピーカーユニットだけで低音から高音までをスムーズにクリアに再生できればいいのだが、実際はなかなかそうもいかない。であるので、高音再生のスペシャリストである「ツィーター」と、中高音再生のスペシャリストである「ミッドウーファー」とに、役割分担をさせることが多くなっている。これが「2ウェイ」だ。しかしながら実をいうと、「2ウェイ」のミッドウーファーには、そこそこに大きな負担がかかっている。高音再生からは解き放たれているが、それでもまだまだ担当範囲がかなり広い。なので、担当範囲の上側の音を再生する際には、“分割共振”と呼ばれる、振動板が波打つような動きをしてしまうことが往々にして起こり得る。だからといって聴いてはっきりとわかるほど音が濁るわけではないのだが、担当範囲の音をすべてクリアに再生しきれてはいない場合が多いのだ。そこに中音再生のスペシャリストであるミッドレンジスピーカー(スコーカー)を加えれば、ミッドウーファーの負担を減らすことができる(“分割共振”が起こる可能性をかなり減らせる)。カーオーディオではさらに、中音を再生するスピーカーを高い位置に装着できることも利点となる。中音も目の前から聴こえてくるようになれば、足元にあるスピーカーで鳴らすよりも得られる情報量が増える。このような理由等々で、カーオーディオでは、「3ウェイ」が有利とされているのだ。■しかしながら「3ウェイ」はハードルの高いシステムでもある…。とは言いつつも、「3ウェイ」にもデメリットがある。1つ目のデメリットとして挙げるべきは、「コントロールが難しくなること」だ。音の出所が片側で3か所となるので、バラバラに発せられる音を1つにまとめるのが、なかなかに難しくなる。なので、もしも「3ウェイ」に挑戦するならば、併せて「DSP(デジタルシグナルプロセッサー)」も導入したいところだ。コントロール機能を充実させて、片側3個、左右で合計6つのスピーカーを緻密に制御できる環境を構築できると、デメリットを解消しやすくなる。ただし…。このことがさらなるデメリットも生んでしまう。「システムが巨大化する」のだ。「DSP」を導入すれば外部パワーアンプが必要となり、「3ウェイ」の場合はスピーカーユニットが多いので、パワーアンプの必要ch数も増える。取り付けにおいても手間が増えるので、その点でも費用が膨らむ。「3ウェイ」は結構ハードルが高いのだ。でも最近は「パワーアンプ内蔵型DSP」に優秀な機器が増えている。これを用いれば、ワンボディで「DSP」と「パワーアンプ」を手に入れられる。しかもある程度の小型化を達成しているモデルもある。「3ウェイ」に挑戦したいと思ったときには、「パワーアンプ内蔵型DSP」の使用を検討してみると、負担を最小限に抑えられる。というわけで、「3ウェイ」にはメリットがあるのだが、ハードルは低くない。であるので最初から「3ウェイ」を組むのはあまり現実的ではないのだが、しかしいつかは「3ウェイ」に挑戦してみるのも悪くない。「3ウェイ」を後々の目標として考えておくと、カーオーディオをじっくりと長く楽しめる。■手頃に「3ウェイ」を楽しめる製品もある。それは…。ところが、ハードルの低い「3ウェイスピーカー」がいくつか存在している。それらならば、最初からでも「3ウェイ」を始めやすい。まず、とっておきを紹介しよう。それは、「MTXオーディオ」の『イメージプロ』シリーズだ。こちらでは、ツィーターとミッドウーファーが最初から専用エンクロージャーに収められているので、設置が簡単だ。それをダッシュボード上にポンと置けば、取り付けを完了できる。また、エンクロージャーに収められていることもあり、サウンドの制御も比較的にしやすい。「DSP」を用いずにアナログシステムで運用しても、「3ウェイ」のメリットの効いた良好なサウンドを楽しめる。価格も手ごろだ。エントリーモデルである『IP 463』であれば5万5000円(税別)。このくらいのグレードのスピーカーが予算的にターゲットとなり得るのなら、『イメージプロ』を候補に入れても面白い。また、ドイツの「フラックス」というブランドもおすすすめだ。通常「3ウェイ」というと、ミドルグレード以上のスピーカーとなることがほとんどで、「3ウェイ」スピーカーはそもそも高価である場合が多いのだが、「フラックス」は、エントリーグレードのスピーカーについても「3ウェイ」をラインナップしている。例えば、リーズナブルな『ベーシック・シリーズ』の「3ウェイ」コンポーネントスピーカーの税抜価格は7万円だ。十二分にエントリースピーカーのゾーンに収まっている。「3ウェイ」に興味があれば、「フラックス」の製品もチェックしてみるといいだろう。今週は以上とさせていただく。次週からは、注目の国産ブランドを2つ紹介していく。どのようなスピーカーがあるのかをより具体的に解説していく予定だ。スピーカー交換に興味をお持ちならば、次回もお読み逃しなきように。