ホンダ『カブ』のお祭り「カフェカブミーティング in 青山」が、4日から東京青山のホンダウエルカムプラザで始まった。5日もある。カフェカブミーティングは何かと問われれば、同時期に開催されている東京モーターショーのような強いメッセージ性があるわけではない。ひたすら思い入れたっぷりにドレスアップしたカブをユーザーが持ち寄り、それをウエルカムプラザの最も目立つ1階の駐車スペースに展示することが、イベントのほとんどすべてだ。ほかにあるとすれば、ユーザー同志が飲み物片手に語り合い、トークショーを聞き、訪問者らで展示バイクの人気投票を行うというだけのものだ。ただ、それを偶然、イベントに出会った喪服の一群も、自転車で通りがかった近所の人も、足を止めてカメラを向ける。どれほどの風雪を耐えたのだろうかと思うほどの古いカブ、車体すべてを革で覆ったカスタム車、乗り手を想像させる真っ赤なリトルカブなど、60年、生産台数1億台を数える分だけの個性的なカブを見て微笑む。21年目、21回を数えるオーナーズ&ファン ミーティングは、バイクのお祭りとして定着した感がある。同社二輪広報課の高山正之氏は、イベントを当初から見守ってきた。「手作り、口コミで始めて、最初に集まったのは60台弱。それが来る人拒まずで、カブを置ききれないほど増えて、3年ほど前から同じ内容で2日間連続開催、事前登録をお願いするようになった。両日で約600台。見学者用の駐車場にも100台ほどのバイクが並ぶ」。今ではイベントのプログラムの一つとなったトークショーが、開催のきっかけだった。「バイク・フォーラムと名付けて開催していたトークショーだった。オートバイに乗ってきて交流できるイベントもいいよね、そこで二輪文化を語ることができたら、もっとおもしろいよね、ということで文化を語るなら“文化の日”と開催日も決定した」。イベント・プログラムには、参加者相互の人気投票やトークショー出演者が選ぶカフェカブコンテストがあるが、そこにもカフェカブミーティングの間口の広さが現れている。例えば、最年長賞は82歳の男性、初参加最年少賞は3人の16歳男子。おめでとう、と小さなくす玉でカブ60周年を祝った飾りを付けたカブはスマイル賞を獲得した。「けして1位を決めるためではない。いろんなカブがあって楽しいよね、というイベント」(前出・高山氏)。だからなのか、2017年の新型カブの開発責任者である亀水二己模氏が選んだ亀水賞は、受賞当人が表彰式に登場せず、記念の瞬間を逃した。それでも和やかな空気が流れ続ける。それが、類まれな生産記録を更新し続ける工業製品を支えるユーザーの交流だった。
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