【岩貞るみこの人道車医】手放し運転は、アリかナシか | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】手放し運転は、アリかナシか

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写真はレクサスの自動運転実験車による首都高でのデモ走行(2015年)
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子どもを交通事故から守りたい! 次の世代にいいもの残したい! 鼻息荒く、やや空回り気味ではありますが、交通事故死者数を減らすための4つのキーワード「人・道・車・医療」の視点で毎週木曜日にお届けします。どうぞお付き合いください。

【人】「手放し運転は、アリかナシか」
さて、第一回目は、ずーっと私がもどかしく思っていた、手放し運転について。

自動運転技術がらみの話で、よく出てくるのは「ハンドルから手を離してはいけない」というセリフである。クルマ業界にいても、関係者や同業者から「手を離すと警察に怒られる」「日本の警察はアタマが固くて話にならん」といった話をよく聞く。実際、今から4年前、2013年の東京モーターショーで、某自動車メーカーが自動運転技術のデモンストレーションを首都高速道路で行い、そのときの手放し映像がテレビで放映されるや否や、警視庁から厳しくお叱りを受けたという話も伝わってきた。どのくらい厳しかったかは、残念ながら当事者に直接確認できたわけではないのだけれど、でも、まあ、そうとう絞られたんだろうなーと勝手に思っている。

以来、「手を離したら怒られる!」と、トラウマ状態になっている自動車メーカー。だけど、あれ? 耳をすまし続けていると、別の情報も伝わってきた。いわく、

「叱ったのは“警視庁”。“警察庁”では、手放しがダメとは言っていない」

えー、そうなのお?

一応、ざっくり説明しておくと、警視庁は東京都の機関。いわゆる埼玉県警とか千葉県警と同じである。かたや警察庁は、全体を見ている組織。名前が似ているから紛らわしいけれど、まあ、そういうことです。

で、本題にもどると、首都高速を走らせたがばかりに管轄である警視庁は叱ったけれど、警察庁としては叱る理由はない、と言っているというわけだ。ここまでは二次情報的に洩れ聞いた話なので、どうも真実がよくわからない。要するに、「んじゃ、ハンドルは離していいの、悪いの?」って話である。なので、直接、問い合わせてみましたよ、警察庁に。返ってきた答えはずばり、

「離してもいいです」

おおー。なんだか少し、感激してしまった。警察関係って石頭で融通のきかない人の集団だと思っていたから、この返事がきたときは、握手を求めに警察庁まで行こうかと思ったくらいである(うそ)。

◆技術は正しく使ってこそ、真価を発揮する
離してもいい。ただ、勘違いしないでいただきたいことがある。こういうことだ。

運転者の安全運転義務を定めている道交法70条は、

「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」

とある。そして、確かに以前の警察庁では、この一文を「確実に操作するためには、ハンドルから手を離しちゃダメだよね」と解釈して手放しを取り締まっていたそうだ。しかし、自動運転技術の開発のネックになっているのが「手放しの可否」であることは間違いなく、警察庁としてはいち早く、柔軟な解釈に変えたというわけだ。つまり、

「ハンドルを握っていても、わき見やら居眠りやら、スマホをガン見していては『確実に操作している』とはいえない。大切なのは、確実に操作できることゆえ、ジャッジするポイントは手を離す離さないではない。離したとしても常にドライバーが周囲の状況を確認し、いつでもすぐにハンドルを握って確実に操作できる状態にしておくこと。」

ふむ。安全運転のためには、なにが一番守るべき点なのかがよくわかった解釈である。すばらしい。警視庁が某メーカーを叱っちゃった2013年当時は、解釈の変更が徹底されていなかったのではないかと推測している。それにしても、警察庁のこの柔軟な対応。警察関係者=石頭軍団と思っていた自分を少しだけ反省しよう(少しだけね)。

そして、敢えてここで伝えたい。

いま、自動運転とか、自動運転技術とかで、レーンキープアシスト機能のついたクルマがざくざく出てきている。手は離してもいい。でも、いざってときはすぐにドライバーが操作できるように常に準備しておくこと。これをぜひ、心に留めておいていただきたい。いまの技術では、運転者がぼけーっとしていられるほど、完成度は高くない。それに、あちこちでぼけーっとしたり、手放しでスマホをチェックする人が増殖し、事故でも続発したらきっと警察庁は「こちらが柔軟に解釈して対応したら、これかよ!」と、態度を厳しくもどしかねないし。技術は正しく使ってこそ、真価を発揮する。間違って使えば、どんな技術でも事故りますからね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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