「XC」という名でこの手のモデルがボルボラインナップに登場したのは1997年。当時は本格的なSUVを持たず、ある意味では苦肉の策だったモデルともいえる。そんなXC。本格的なXCと名付けられたクロスオーバーSUVが誕生した後も、『V70』ベースで生産が続けられ、今回V70から『V90』へと移行した際も、すぐさまこのXC(クロスカントリー)モデルが追加されたという次第。現状、このジャンルのモデルはスバル『アウトバック』やアウディ『オールロードクワトロ』など、ごく限られた市場ではあるのだが、メルセデスが『Eクラス』ベースで、『オールテレーン』なるモデルで参入の意思を示しているから、ことによると再び火がつくかもしれない。さてその『V90クロスカントリー』である。V90がベースなのは見ればお解りの通りで、前後のスキッドプレートやホイールオープニングでそれらしい雰囲気を持たせ、さらに地上高は210mmと、スバル『XV』の200mmよりも高く引き上げた。もっともホイールベースもスバルより長いから、差し引きはゼロかもしくはマイナスかもしれない。しかし、どうやら潜在的に高い地上高のモデルは需要があるようで、高い地上高=少し武骨なモデル的イメージがあるものを、このV90やスバルXVは見事に打ち消して、都会的洗練度の高さと調和させているところが、新たな層を掘り起こす可能性を秘めたジャンルともいえる。そろそろ洗練された市場では本格派SUVにも頭打ち傾向を読んだのか、ワゴンベースのこの種のモデルが台頭する起爆剤になる可能性は十分にある。地上高が210mmと高くなった以外にV90と変わるところは基本的にはない。ただし、今回試乗したモデルは「T5」と呼ばれる少し大人しい味付けのエンジンを搭載したモデル。過去に乗った90系のモデルは、いずれもツインチャージャーの高性能版、もしくは「T8」なるPHEVのもので、エントリーレベルのT5に乗るのは今回が初めてのことだ。まずはそのパワートレーンの話から始めると、直列4気筒2リットル直噴ユニットにターボを装備しただけで、スーパーチャージャーは付いていない。スーパーチャージャー付きのT6に比べると、最高出力は66ps低い254ps。最大トルクも50Nm下がって350Nmとなった。トランスミッションに関しては全く同じ8速ATである。いわゆるこのハイエンドの8速ATはZF製が主流だが、ボルボは我が日本製のアイシンを採用している。そのスムーズネスに関していえば、正直甲乙付け難い。どちらもハイエンドモデルとしてふさわしいふるまいを見せてくれる。254ps、350Nmのパフォーマンスが物足りないかといえば、全くそんなことはなく、必要十分以上の性能をが確保されているから、性能面ではT5で十分。燃費だってこちらの方が良いから、積極的にチョイスする必然性もある。スタンダードモデルよりも上がった車高は、フロントにおいてはクロスカントリー専用のホイールスピンドルに、XC90から移植したコントロールアームなどを採用することによって実現したもの。スタンダードモデルよりも55mm地上高が高い。余談だが実はトレッドも前後それぞれ35mm、25mm拡大している。まあ、このトレッド拡大が恩恵をもたらしているか否かは不明だが、重心高が上がった故の不安感は皆無。多少乱暴に転舵したところで、グリップ力も高く、またボディロールもごく滑らかで、グラっとくる印象も全くなかった。地上高が上がることで、雪道や泥濘では高い効果を発揮するはずで、そんなシチュエーションはこのクルマでは味わえなかったが、実は他のクルマで体験済み。高い車高によるデザインのバランスも全く崩れておらず、こりゃホントに売れるかもしれない。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア居住性:★★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★おすすめ度 :★★★★中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
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