車名を判別できる程度の意識で、クルマが通り過ぎるのを見ることがあると思う。あっ、スバル『XV』だな…と。その時、果たしてあなたはそれが「新型のXV」だと気付くだろうか。恐らく走り去る姿をパッと見て、それが新型だと言い当てる人は、多分現行車のオーナーぐらいか。実はそれほど新旧のXVは、見た目での判断が難しいほどのキープコンセプトであった。かくいう僕自身、軽井沢で開催された試乗会に持ち込まれた旧型がどれなのか、判断が付かなかったほどである。勿論、その気になってちゃんと見れば、グリルは違うし、ランプ類は前後とも異なるし、ホイールアーチの樹脂モールだって微妙に形が異なる。しかし、全体のフォルムはまさに旧型と同じ。つまり、デザインに関してはかなりコンサバな仕上げだといって間違いない。インテリアはさすがに大きく異なっていて、特にベンチレーターの吹き出しは従来のナビディスプレイの上から、その左右に位置が変わり、ダッシュの造形は大きく異なっている。2.0iのインテリアは、アクセントとして加えられるオレンジ色のステッチが、従来はシフトレバー根元やシート、それにステアリングなどだったものが、今回はさらにダッシュボードにも加えられて、全体として少し高級感を増した作りとなっている。なお、このステッチは1.6リットル版には入らない。とまあ、外観では区別がつかないほど似ている新旧だが、いざ乗ってみると恐ろしいほどの進化を遂げていることが、すぐさまわかる。冒頭お話ししたように、旧型の2リットルが持ち込まれていたので、新型の2リットルに試乗したすぐ後に、旧型の2リットルに乗ってみた。すると、全体のボディの動きが緩いこと緩いこと。走行は1万kmを少し超えた程度のクルマなので、決してやれたものではないにもかかわらず、新車と比べるとあちらこちらがプルプルと震える。これに対して新型の方は、シャキッ、バシッと路面の凹凸や繋ぎ目を見事に一発で収束させ、極めて高い剛性感を感じさせてくれるのだ。実は、旧型の改良型に乗ったのはほんの2年ほど前。その時は凄くいいと思ったものだが、たった2年でその印象はガラリと変わってしまった。それを現実のものとしたのは、「スバル・グローバル・プラットフォーム」と名付けられた全く新しいプラットフォームである。すでに『インプレッサ』で実用化されたこの新プラットフォームがXVにも採用されている。前述した剛性感の高さはこれに起因するものなのだが、車内テストによれば走安性も大きく向上しており、スラローム時のロール角も小さくなり、その速度も速くなっているという。今回の試乗ではそこまでのテストはできなかったが、少なくとも剛性の高さと静粛性に関しては、顕著に良くなったことが実感できた。シンメトリカルAWDの威力を試すべく、オフロードも用意されていた。2日前にこの季節だというのに雪が降り、それが解けた路面コンディションは、自分のクルマだったら絶対入らないレベルにこね回されていて、その性能を試すには絶好。今回はX-modeという、さらに高いレベルのコントロール機能が2リットルモデルに装着されて、それを試すべく走ってみたのだが、結論から言うと恐ろしく高い走破性能は、X-modeのお世話にならずとも、さらりとその悪路を抜け出してしまった。因みに今回は従来型より地上高を20mm高め、200mmとしたことも功を奏している。旧型とそっくりなボディは実は大型化していて、ホイールベースで+30mm。3サイズは全長で+15mm、全幅で+20mmの拡大となった。なお、全高及びミラーを含む最大幅に関しては従来と変わりはない。また、大型化しても最小回転半径は5.4mでこれも旧型と同じである。残念ながらまだナンバーが取得できておらず、今回は特設コースだけの走行であった。いずれ公道を走れる時が来たら、もう一度試してみたい。いずれにせよ、コストパフォーマンスは抜群に高いモデルである。■5つ星評価パッケージング ★★★★★インテリア居住性 ★★★★★パワーソース ★★★★フットワーク ★★★★★おすすめ度 ★★★★★中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
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