『2シリーズ』の立ち位置は、女性に寄り添っている。ひとりで運転するのに、これほど似合うサイズはない。大人の男性が乗ると、ちょっと物足りなくなりそうなコンパクトさも、女性の華奢さ加減だとうまくはまる。もっとも、世の中に存在するのは華奢な女性ばかりではないけれど。しかし、Mシリーズの『M2クーペ』となると少し、様相が違ってくる。小さなボディに骨太な意志。ぐっとくる面構え。クーペゆえの大きめなドアを開けるとずしりと重く、乗り込んで締めると完全に下界と空気が遮断される。ドアを閉めただけで、これだけ剛性感を感じられるのだ。走り出したら当然のごとく、とてつもない守られ感に包まれる。M2のがっちりとしたボディが、運転席にいる自分の周囲の空気だけを切り取ったかのように進んで行く。そのボディを、トルクのあるエンジンがこれでもかというくらいに前へと加速させる。加速を表現するのは、軽いという言葉ではない。アクセルに伝わるペダルの反動は、重いと感じるほうが正確だ。そしてその重さを感じながら、自分の意志で踏めば踏むほど、ぐいぐいと加速していくのである。加速やコーナリングの気持ち良さもあるけれど、ブレーキを踏んだときのシフトダウンもたまらない。たとえ、街なかの信号にむけてであってもブレーキをぐっと踏んでいくと、完璧なヒール&トゥが決まったかのように、シフトダウンを決めていく。そのときのエンジン音のよさといったらない。そりゃ、燃費を感じたエコ運転を推奨する人からは、ゆるゆる走れと言われそうだけれど、運転の基本は、メリハリ。このシフトダウンの音を聞くだけで、心が洗われる思いがするのである。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★★岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。