トヨタの小型セダン『プレミオ/アリオン』がマイナーチェンジを受けた。プレミオは1957年に発売された『コロナ』をルーツとするモデルで現行モデルは通算13代目、アリオンは1970年にデビューした『カリーナ』がルーツで現行モデルが通算9代目だ。2車種はFF化されたころから姉妹車の関係を構成するようになって現在に至っている。現行モデルのプレミオ/アリオンは2007年のデビューで、9年目にして2回目のマイナーチェンジである。外観デザインはフロント回りを一新しことで大きな変更感があり、内装にも手を加えたほか、先進緊急ブレーキを含むトヨタセーフティセンスCを採用するなど、安全装備も充実化している。全幅を5ナンバー枠に収めたコンパクトなボディながら、同じ5ナンバー車の『カローラ』に比べるとホイールベースは100mm長く、室内空間はたっぷりした広さが確保され、後席にも大人がゆったり乗れる空間がある。運転席に座れば視界が良くて運転のしやすさを感じる。パワートレーンや足回りなどは変更を受けていないので、走りのフィールは基本的に従来と変わらない。ごく普通のファミリーセダンとして、1.5リットル車は必要十分な走りを示し、1.8リットル車になるとけっこう良く走る印象だった。1.5リットルエンジンは回したときの騒音がやや大きめな印象だが、1.8リットルエンジンならそれほど回さなくても力があるので、結果として静かな走りを得やすい。乗り心地の良さも小型セダンとして上々のレベルにある。やや柔らかめの足回りが快適な乗り心地を感じさせ、路面の荒れた部分からの入力もうまくいなしている。ステアリングはもう少し手ごたえが重くても良いと思うが、操舵(そうだ)フィールや最小回転半径も文句がない。なので、乗ってみてこれといって文句を付けるような点のないクルマなのだが、デビューから9年も経過したクルマがマイナーチェンジで良いのかと思う。今では5ナンバーサイズの小型セダンはほとんど日本国内でしか通用しないものになっていて、日本でもその市場はどんどん縮小し、ユーザーは高年齢化している。だからコストをかけてフルモデルチェンジしても採算が合わないことは十分に理解できるが、それでもなお日本のユーザー向けに最良のクルマを提供してほしいと思うのだ。考えてみれば、ほかの国内メーカーはこのクラスのクルマを日本専用車として作らなくなって久しい。代わりにアメリカ向けや中国向け、あるいはタイなどの新興市場向けに開発したクルマを、ついでに日本でも売るというのが最近のビジネスモデルだ。かつてこのクラスのライバル車として存在したブルーバードもギャランもアコードもカペラも、既に絶版になるかボディサイズを拡大した違うクルマになっている。日産もホンダも三菱もマツダも、更にいえばスバルやスズキまでもが、グローバルな経営を理由に日本市場を軽視したクルマ作りをするようになったのが最近の状況である。そんな中でトヨタがこのクラスのクルマをしっかり作り続けていることは、むしろ評価すべきことなのだとも思う。恐らくこのモデルが最後になるのだろうが、マイナーチェンジをして引き続き作り続けるのは、より歓迎すべきことである。でも、マイナーチェンジではなくフルモデルチェンジをすれば、もっと良かったのにと思う。より環境性能に優れたパワートレーンを搭載することができただろうし、安全装備も先進緊急ブレーキが簡易型のトヨタセーフティセンスCではなく、人間を見分けて減速するトヨタセーフティセンスPを採用できたはずだ。ほかのメーカーが日本市場に真剣に取り組まなくなっているからこそ、せめてトヨタには日本市場に向けてもっと良いクルマを提供してほしいと切に思う。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
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