新型日産『セレナ』が8月24日、全国一斉に発売された。今回のチェンジで最大の注目はやはり日産が“自動運転技術”を活用したとする運転支援技術『プロパイロット』だろう。単眼カメラで先行車を測距して速度を自動制御するこの技術、その能力について開発担当者に聞いた。先行車との車間距離を自動的に調整して走行するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC。日産はインテリジェント・クルーズ・コントロール=ICCと呼ぶ)は、これまでステレオカメラやミリ波レーダーといった機器を使うのが定番で、単眼カメラを使うにしても先行車との測距にはミリ波レーダーを組み合わせていた。それに対して日産がセレナで採用したのは単眼カメラだけで測拒して制御するもので、高速走行でこれを実現したのは日本初となる。プロパイロットのACC対応中は、先行車の速度に追従するのはもちろん、先行車が停止すればそれに追従して停止。3秒間以内なら再び先行車に追従して自動走行が開始される。また、車線逸脱防止支援システム(LDP)も備えられ、都市間高速の緩やかなカーブ程度なら強力なアシストで車線内をトレースして走ることができるという。もちろん、ドライバーはステアリングから手を離すことは許されず、ステアリングへの入力が一定時間ないとこの機能は自動的に解除されてしまう(5秒で警報、10秒で解除)が、この体験こそ、まさに“プチ自動運転”を実感できる瞬間と言ってもいいだろう。ただ、気になるのは単眼カメラによる認識で本当にどこまで対応できるのかということ。質問に答えていただいたのは、電子技術開発本部 IT&ITS開発部の笈木大介氏。笈木氏によれば、「単眼カメラを使う技術はすでにエマージェンシーブレーキで採用していて、日産としてセレナが初めてというわけではない」と話す。とはいえ、エマージェンシーブレーキは30km/h以下の比較的低い速度域での対応で、ACCは100km/hを超える高速での対応となるため、単眼カメラでの対応は難しかったはず。だからこそ、日産はこの測距技術に独自のアルゴリズムを持つイスラエルの「モービルアイ」社の技術を採用したのだ。笈木氏はこれについて、「測距にモービルアイ社の技術は採用していますが、エマージェンシーブレーキで培った技術の蓄積もあり、制御については弊社が直接開発して安全性を確かめています」と自信をのぞかせる。ならば「その測拒能力はステレオカメラやミリ波レーダー並みと考えていいか。特に割り込みがあった場合とかで」と突っ込んで質問してみた。これに対して笈木氏は、「センサーが複数あればそれに越したことはありませんが、前方に対する制御で他のセンシングよりも劣るとは思っていません。割り込みについてもケースbyケースなので、一概に“超えているか”どうかの判断は難しい」との回答だった。笈木氏の回答から判断できるのは、日産は単眼カメラでもステレオカメラやミリ波レーダーに遜色ない制御ができるとしていること。さらに同一車線内を走行している限り、都市高速のようなきついカーブでもない限り、ほぼ車線内でカーブをトレースするアシストを行う。つまり、通常の高速道路を使ったドライブなら十分に実用になるレベルに到達したと言うことだろう。いずれにしろ、緊急時の対応はドライバーの責任の下で行うことになっているのだから。一般公道でプロパイロットの試乗できるのが今からとても楽しみになった。
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