『カングー』の新規ユーザーの8割は国産車からの乗り換えだそう。確かに日本車でこのタイプのクルマは探そうにも見当たらない。翻ってレポーターは2名+柴犬1匹の生活を“チンク”1台でこなしているが、もし家族が多く、余暇を楽しむ時間の余裕を持っているなら迷わず『カングー』を選ぶ、だろう。かっこいい道具であることがこのクルマの魅力。それはユーロパレットが載せられるよう拡幅された現行型でも変わらない。少しぐらいボディが凹んでいようと、塗装が落ちてこようと、スチールホイールだろうと、そのまま意気揚々と乗りこなすのがかっこいい。加えて出自がヨーロッパのコマーシャルカーであるだけに、とにかく信頼に足りる堅牢さ、安心感ももっている。こてんぱんに使いこなせる実用車の見本という訳だ。試乗したのは最新の1.2リットルターボ+6速デュアルクラッチ「EDC」搭載車。気になる走りだが、チカラもドライブフィールも十分だった。とくに“自動クラッチ”の変速のスムースさ、的確さは何気なく秀逸だ。シットリと安心感のある手応えのステアリングフィールもいい。サスペンションは専用チューンというが、意外や1.6リットルモデル以上にしなやかで、懐かしいルノーの乗り味に思えた。走行中のロードノイズも、以前はもっと室内に響くような記憶があったが、音質も音量もまったく耳障りではない。ドタッ!と逞しい閉じ音をたてるドア、室内頭上の有効な物入れなど、豊かで快適な居住空間は実用性にも富む。ダブルバックドアはヒンジ部のロックを外せば左右とも全開で180度開けられるのも便利。なお“ジョン アグリュム”と呼ぶ黄色は今や日本市場専用色だという。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★★★島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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