日産が「下請法違反勧告後も不適切な取引継続」報道に対する外部調査結果を公表 | CAR CARE PLUS

日産が「下請法違反勧告後も不適切な取引継続」報道に対する外部調査結果を公表

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日産自動車記者会見
  • 日産自動車記者会見
  • 日産自動車の内田社長
  • A社からの見積書(日産指定のフォーマット)
  • 横浜市にある日産自動車の本社

日産自動車は5月31日、公正取引委員会から3月に下請法違反の勧告を受けた後も不適切な取引を続けていたとの一部報道に対し、取引先に威圧的な対応を行っていた実態は確認されなかったとする外部調査結果を公表した。



調査を担当した長島・大野・常松法律事務所の辺誠祐弁護士は同日、横浜市にある日産の本社で会見し、「報道では本年(2024年)4月付けの見積書、メールに言及があったので、日産の購買担当者260名の4月のメールの内容をまずチェックしている。そこから報道で言及された見積書や、『当社の目標』等と記載されたメールでの連絡といったものが確認されたので、それと関係を有すると考えれた部門の関係者合計37名に対し、のべ43回のヒアリングを実施した」と調査の経緯を説明。

●試作品の取引のフォーマット

まず下請け先であるA社が日産が作成したフォーマットに従って見積書を提出した際、金額を入力すると数%から数十%の原低率相当額が控除された金額が自動表示され、価格が一方的に減額されてしまう、との報道に関しては「我々の調査では、報道されたような計算式と個別原低に関する記載が存在する見積書のフォーマットの利用というものが確認された。ただし日産と取引関係のあるサプライヤーは2000社を超えるが、このフォーマットは量産品サプライヤーとの間では利用されておらず、あくまで試作品のプレス部品を製造する数社との取引にのみに、限定的に利用されるものであるものであったということを確認している」と明かした。

●原価低減に係る交渉に関して問題はない

一方で「このフォーマットが利用されるようになった経緯は、2015年に一品一様の試作品プレスの価格レベルの妥当性、一貫性を担保する目的で、日産と各サプライヤーは原単位コストテーブルというものにより算出される単価の使用を合意したもの。あくまで見積書を提出する際にサプライヤーが入力する金額は、サプライヤー自身の見積金額ではなく、2015年に合意した原価低減前の当該コストテーブルにより算出される査定値を入力していたところ」とした上で、「この原単位コストテーブル、個別の原価低減に係る合意の交渉経緯に関して、資料の検討やヒアリングのプロセスで特段の問題は確認されていない」と述べた。

●報道されていない文言

さらに「報道では『個別原低とは弊社より依頼したもの』という記載があるということだったが、実際のフォーマットには、それに続けて報道されていない文言として『御社で独自に取り組んだもの。等の原低内容です』という記載が存在した。従ってこのフォーマット上は弊社、御社の両社に言及するもので、日産とサプライヤーの双方が原価低減に取り組んでいる、そういう内容の書面だったことが確認されている」とも付け加えた。

また別の取引先に対して日産の担当者が『長い付き合いだからといっていつまでも仕事もらえると甘く見るなよ』などと告げたとの報道に関して辺弁護士は「威圧的なコミュニケーションがなされている事実は我々の調査で確認されていない」とした。

●原価低減に関して合意、根拠のある数字

その上で「計算式が設定された見積書のフォーマットであったり、目標の金額を示したメール等、報道に関する事実が確認された一方で、コストテーブルや原価低減に関して日産とサプライヤーが合意していた事実、また示されていた目標金額というものは一定の根拠を持つ参考値であることなど、必ずしも報道されているわけではない新しい事実が、私どもの調査で確認されているということになる」と結論付けた。

●不満の声が上がっていることは事実

外部調査の結果を受けて日産の内田誠社長は「報道にあったような当社からの一方的な行為は調査では確認されなかったとの説明があった」としながらも、「各方面において取引先からご不満の声が上がっていることは事実であると思い、より厳しい目線で自らを振り返り、日々のやり取りにおいて当社に至らない部分があった点、改善すべき点を含め、今後適正な取引ができるよう取り組みを強化し、こうしたご不満の声が無くなるよう努力していきたい」と表明。

まず「試作事前見積書およびメールに記載していた誤解を招く表記については、直ちにその運用を廃止している。またこうした状況を踏まえ、取引全般まで範囲を広げた追加点検を現在実施している」と明かした。

●社長直轄の新たな組織

さらに「今年4月には購買部門にコンプライアンス室を立ち上げているが、今回の件を受け様々な課題に網羅的に対応で切る新組織を追加することで更なる体制強化も図っていく。重要なことは取引先の困り事を正しく理解し、速やかに対応していくことだと思っている。その一環として社長直轄の新たな組織をつくり6月から活動を開始する」とも述べた。

具体的には「まず法令違反の疑いなどがある場合にその声を匿名でもお寄せいただけるようなホットラインを外部に設置する。さらにモノづくり部門ならびに関連部署の担当者からなるパートナーシップ改革推進室を新設する。このチームは積極的に取引先のもとへ足を運び頂いた声を速やかに社内にフィードバックする。各部署の通常窓口に加えて新たに2つのルートを設けることで取引先の状況把握であったり法令順守の徹底をより一層図っていきたい」と説明した。

《小松哲也》

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