マツダは、5月22日から24日までパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」に、『MX-30 Rotary-EV』を出展。合わせて、マツダの「2030 VISION」の実現を目指す取り組みを紹介した。
◆洒落たブースの中心にはMX-30 Rotary-EVを出展
会場はグレー系のフレーム枠に木質をを組み合わせた新たなコンセプトでの展開。いつものように、デザイナーの監修が入った展示内容は洒落たイメージを伝えてくる。会場には多くの人が詰めかけ、そこで注目されたのはやはりシリーズ式ハイブリッドの発電ユニットに新開発のロータリーエンジンを採用した MX-30 Rotary-EVに他ならない。展示会場にはその中央に実車が展示され、多くの人がボンネット内をのぞき込む姿が見られた。
MX-30 Rotary-EVの実力はPHEVとしての高く評価されている。特にEV走行換算距離は107kmと、国内PHEVとしてはトップクラスを達成。その上でさらなる長距離ドライブにも対応可能なEVとしての使い方を拡張したことがポイントとなる。
また、走行中の扱いやすさも大きな魅力で、3つの走行モードを用意。シーンに合わせてモードをワンタッチで切り替えられ、電動車ならではの快適な走行が楽しむことが可能だ。また、プラグイン機能としての充電は普通・急速(チャデモ)方式に対応したことから、1500Wの給電やV2Hなど、電源車としての活用も見逃せない。
◆ハウジングの大幅な軽量化を実現した決め手とは?
MX-30 Rotary-EVの横にはMX-30に搭載されたロータリーエンジン「8C型」と、『RX-』8にも搭載された「13B型」ロータリーエンジンのハウジングが展示して注目を浴びた。この展示は、電動車にロータリーエンジンを搭載するにあたり、ハウジングの大幅な軽量化が図られたことをアピールするために出展されたものだ。
軽量化にあたっては、これまでハウジングに使ってきた素材を鉄からアルミへと変更したことが大きいが、その効果はエンジン全体で15kg減ともなり、会場にいた説明によれば「質量で言えば1/3になった感覚」だと話す。ただ、単にアルミ化するだけでは当然ながら強度は不足する。そこで、その対策として採用されたのがサイドハウジングに「サーメット溶射」と呼ばれる技術だ。
“溶射”とは、材料を溶かしたり溶融に近い状態で吹き付けて成膜する技術で、ここでは高速クロムモリブデンを採用。これによってサイドハウジングの耐摩耗性と量産性を確保することが可能となった。特に見逃せないのは、排気量を13Bの654ccから830ccへと増えているにもかかわらず、外形寸法はほぼ13Bのままであるということ。会場ではこうしたMX-30 Rotary-EVが誕生した背景を見ることができた。
◆「2030 VISION」の実現に向けた取り組みを紹介
そして、マツダが2030年に向けた経営基本方針「2030 VISION」とは「カーボンニュートラル(CN)」、「電動化」、「人とITの共創による価値創造」の3つを掲げる。
CNについてマツダは、2050年にサプライチェーン全体で挑戦することを宣言。具体的には、2030年に向けた商品の電動化と、2035年に向けた事業の脱炭素化がある。
電動化については、2030年にBEV比率を25~40%を想定し、3つのフェーズを経て、地域特性や環境ニーズに応じた電動化伝略の最適化を推進。脱炭素化については、グローバル自社工場でのCNを実現するため、総排出量の約75%を占める国内の自社工場と事業所における中間目標とロードマップを策定。その結果、2030年度にCO2排出量を2013年比で69%削減することを目標とした。
人とITの共創による価値創造では、研究開発におけるDXの取り組み事例として、開発効率化と新価値創造に貢献するMBD(モデルベース開発)・MBR(モデルベースリサーチ)+AIを活用し、人の能力を最大限に引き出す研究開発についての紹介を行った。また、社内外のデジタル人材の育成・普及への取り組みについては、マツダ社内だけでなく産学官でで取り組んでいくとした。
この展示からは、マツダとして時代に適合して走る歓びを進化させ、日常の移動体験の感動を量産する、いわば“クルマ好きの会社”へ発展していくことを今後も目指していく考え方を感じ取ることができた。