3月31日に開催された『Yupiteru presents お台場痛車天国2024』で、車体にペイントを施すサービスを行う企業「F-LOOP」が初出展した。
同社は従来の痛車に用いられるカッティングシートではなく、特殊な塗料を使って車体を装飾する企業。わかりやすく言えば、超巨大なインクジェットプリンターで自動車に印刷をしているわけだ。ブースには、この技術で制作された痛車「日本の絵師 初号機」(トヨタ『ハイエース』)が展示されていた。
車体に描かれた鮮やかなイラストは、人気イラストレーター「エイチ(Ech)氏」の作品。カッティングシートは使われておらず、すべて印刷で施されている。車体に顔を近づけてよく見れば粒子のような細かな点が確認できるが、離れて見るだけでは一般的な痛車と区別がつかない。
F-LOOP 代表取締役の田上圭一氏は、「従来のカッティングシートも利点は多いです。なので、弊社のサービスはカッティングシートに取って代わるものではなく、痛車制作のひとつの選択肢として考えてほしいです」と言う。
田上氏が語るカッティングシートの利点は、貼るだけですぐに施工が終わることや、シートのバリエーションの多さなどが利点と言う。その反面、大きな面積の施工には職人の技術が必要なことや、シートを剥がしたときに粘着跡や日焼け跡がついたり、施工費用が高い欠点がある。
一方、F-LOOPの印刷は、印刷前に車体形状のデータ計測や印刷後に乾燥させるための時間はかかるものの、カッティングシートの2/3程度の費用で行えるそうだ。もちろん車体の形状やサイズによって費用は異なるが、展示されていたハイエースの場合は、約40万円で痛車化できる。なお、施工にかかる日数は、わずか3日だ。
F-LOOPの利点はコストと時間だけではない。印刷箇所はクリアーでコーティングされているため、雨はもちろん洗車機もオーケー。さらにカッティングシートでは難易度の高いドアやボディーの接合部なども、きれいに印刷可能。加えて痛車のグラフィックを変更したくなったら、特殊な溶剤を使って元通りに戻せる。この費用は約10万円とのこと。
いままで痛車に興味はあるが、なかなか手が出なかった人にとって、かなり魅力的なサービスだ。
F-LOOP アートディレクター・石川達也氏は、「弊社の印刷は5色のインクで行っています。具体的にはCMYKとクリアーです。紙媒体の一般的な印刷と同じなので、フルカラーのグラフィックを印刷できます」と語る。
ブース内では、痛車の他にブラインドやパーテーションに施した印刷例も展示されていた。特にブラインドがユニークで、表と裏に別の絵が印刷されていた。スラット(羽)を回転させると別の絵が現れるので、その日の気分に応じて二種類の絵を楽しめる。痛車とは関係ないが、このサービスも検討中とのこと。
F-LOOPは同社の印刷サービスを広めるため、ブース内で書道家の真澪氏の書道パフォーマンスを行った。真澪氏が書いた「日本の絵師」という文字は、F-LOOPが展開するプロジェクト名。これはイラストレーターと痛車ファンをつなぐ取り組みで、現在10名のイラストレーターが所属しているそうだ。
田上氏は「我々はまだ痛車の文化を勉強中です。これからも痛車ファンのみなさんに喜んでもらえるようなサービスを模索していきたいです」と語った。