2023年も終わりに近づき、自動車業界では恒例の2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤーが12月7日に決定する。この“わんダフルカーライフ”ではそれより一足早く、カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもあるボクと、このわんダフルカーライフでもおなじみ、自称自動車評論犬!? として活躍している愛犬のジャックラッセルのララが、今年一番のドッグフレンドリーカーを、日本カー・オブ・ザ・イヤーの国産ノミネート車種から選考することにした。
◆ノミネートは9台、ドッグフレンドリーカーの要件は?
今年のわんダフル カー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされているのは、以下の9台である(日本カー・オブ・ザ・イヤーのノミネート番号順)。
1.スバル『インプレッサ』
2.スバル『クロストレック』
3.スバル『レヴォーグレイバック』
4.トヨタ『アルファード/ヴェルファイア』
5.トヨタ『プリウス』
6.日産『セレナ』
7.ホンダ『N-BOX』
8.ホンダ『ZR-V』
9.三菱『デリカミニ』
ドッグフレンドリーカーの要件は、この「青山尚暉のわんダフルカーライフ」でも何度も紹介しているが、愛犬の乗り降りのしやすさ、愛犬の乗車場所の快適度、聴覚に優れた犬に嬉しい車内の静かさ、車内ではどこかにつかまれない犬にとって快適な車両の姿勢変化の少なさ、暑がりの犬が1年中、後席で快適に過ごせる後席の空調環境、そして何と言っても、10年から15年という犬の短い犬生の間にできるだけ多くの家族と終始、一緒にいられるドライブ旅行の機会を1回でも多く楽しませてあげるための、冬や雪道の走行も安心安全な高い走破性…などが挙げられる。今回もそうした視点で、ボクとララが9台のノミネート車から、わんわん諤々(がくがく)とベスト3を選んでみた。
実は、全9台のほとんどが、自称自動車評論犬!? 歴10年のララによれば、偶然にもドッグフレンドリーカーとして相応しいクルマなんだそう。僕も同感である。素晴らしいラインナップではないか!
◆わんダフルな今年の1台、国産車編の1位は三菱 デリカミニ!
自称じゃない自動車評論家とボクとジャックラッセルのララが2023-2024 わんダフル・カー・オブ・ザ・イヤーの1位に選んだのは、三菱 デリカミニ。
ボクたちが考える、ドッグフレンドリーカーに必要なドッグフレンドリーポイントのすべてを満たしているわけではないのだが、まずは犬顔のフロントフェイスと、CMキャラクターの犬らしき「デリ丸」君の可愛さがポイント(デリ丸くんの冬バージョンでは赤いマフラーを巻いています!)。
ララは「デリ丸」くんの小さなぬいぐるみを手に入れ、弟のように可愛がっているぐらいである。
もちろん、それだけではない。ララによれば、まずはスライドドアからの低く段差のない乗降性が犬にとって優しく便利で、Premiumグレードには運転席・助手席側ハンズフリーオートスライドドアが標準装備されている。軽自動車にして、例えば、片手に荷物を持ち、片手で犬を引いているような場面でも、キーを携帯していれば足先をBピラーの下あたりに出し入れするだけで、ハンズフリーでスライドドアを開閉できることができる便利さも、大いなるドッグフレンドリーポイントと熱弁。犬の特等席となる後席は、座面がフラットで安定した姿勢で乗っていられるだけでなく、320mmものシートスライドを最前端位置にセットすれば、前席との隙間が小さくなる。万一の急ブレーキの際も、ペット用シートベルトの装着状態でもフロアに落ちずに済む安心感があるとともに、前席の飼い主との距離が縮まり、アイコンタクトもしやすく、お互いに安心してドライブを楽しめるところがいいわん、とのこと。
さらに、後席エアコン吹き出し口を持たない軽自動車ながら、プラズマクラスター付き天井サーキュレーターを用意。サーキュレーターは前方から吸い込んだエアコンの冷風を、サーキュレーターの後ろ側から排出し、後席エアコン吹き出し口同等の空調環境が得られるのである。プラズマクラスターの消臭機能も、犬が乗るクルマには嬉しい機能と言っていい。また、スライドドア部分のウインドーに付くロールサンシェードもドッグフレンドリーな装備であり、直射日光を和らげ、車内温度の上昇を抑制してくれるとともに、犬が嫌がる外からの干渉も防げるふたつのドッグフレンドリーポイントを持っているのである。
そしてデリカミニは走ってもドッグフレンドリーだった。ララによれば、「乗り心地は想像以上にしっかりとした快適性があり、走行中は聴覚に優れた犬の耳にも優しい静かさが保たれていて、カーブや山道でも意外なほど前後左右の姿勢変化の少なく、車内でどこかにつかまれない犬も安心して乗っていられたわん」とのことだ。さらにシートが汚れや水気に強く、臭いも染み込みにくい撥水生地を使っている点も、注目すべきドッグフレンドリーポイントのひとつと言える。
ターボモデルなら、実際南房総までのドライブを経験しているのだが、まったく疲れず快適に往復できたことや、宿泊を伴うドライブ旅行の荷物、ドッグカートまでしっかり積めるラゲッジルームの使いやすさもまた、デリカミニの強みにほかならない。
ララは、『デリカD:5』とデリカミニの2台持ちだと最強ワン! なんて言っている。
◆2位はスバル クロストレック&レイバック
2位はスバル クロストレックとレイバックだ。すでにクロストレックでも南房総へのドライブを経験しているララは、クロストレックの素晴らしく快適な乗り心地や、スバル車としてびっくりの車内の静かさ、前後左右の姿勢変化の少なさ、AWDのXモード搭載による悪路、雪道の走破性の高さが大いに気に入っているそう。実は、クロストレックが履いているオールシーズンタイヤが、開発陣も驚くほど(想定外)のロードノイズの小ささと乗り心地の良さを実現しているである。唯一、後席エアコン吹き出しがないところと、『レヴォーグ』やレイバックなどと違い、後席4:2:4分割じゃないところが「ちょっと残念わん」とのこと。4:2:4分割であれば、万一、大型犬がラゲッジルームに乗ったとしても、中央の2部分を倒せば空間ができ、ラゲッジルームにエアコンの風が届きやすくなるとともに、飼い主とのアイコンタクトも容易になるのである。
ところで、レヴォーグでも湯河原までの遠出の経験あるララは、アイサイトXの先進的安全性能にも満足しているものの、乗り心地はちょっと硬めなところが気になっていたそう(ボクもスポーティワゴンとして運転するのは楽しい)。しかし、レヴォーグベースのクロスオーバーモデルとなる最新のレイバックは“都会派SUV”として、悪路、雪道での脱出性能を高めるXモードこそ備えていないものの、最低地上高200mm×スバル自慢のAWD×オールシーズンタイヤで武装したオールラウンダーなモデルであり、なおかつ後席エアコン吹き出し口、最新のD型レヴォーグ(2023年10月25日発売)とともにアイサイトXが標準装備され、さらに大型犬をやむなくラゲッジルームに乗せる際、後席が4:2:4分割で、中央の2部分を倒すことで、車内にいる飼い主とのアイコンタクトがしやすく、また後席エアコン吹き出し口からの風も通りやすいドッグフレンドリーポイントとともに、クロストレックに準じた、レヴォーグとは別格の乗り心地の良さを評価。クロストレックと同率2位とした。
なるほど、である。この両車、ドッグフレンドリーポイントの高さでは肉薄。悩ましい選択でもあったりする。
また、クロストレックは兄弟車のインプレッサ同様に、ちょっとした段差のあるラゲッジルームの開口部が、ラゲッジボードの下にオプションのトノカバーを床下にセットするとフラットになり、やむなく中大型犬をラゲッジルームに乗せる際、より安全に乗り降りできるようになる点もポイント。
◆3位は日産 セレナ
3位に選ばせてもらったのは、国産ファミリーミニバンの定番中の定番と言える、日産 セレナのe-POWERモデル。何しろ、e-POWERは100%電動駆動で、走りはウルトラスムーズかつ静か。Mクラスボックス型ミニバンの中で、前席、全列の静かさにおいてベストと言えるほど。1.2リットルから1.4リットルに改められた発電専用のエンジンを回すシーンでも、“発電専用”ゆえに静か。先代より乗り心地はやや硬めになったものの、段差などでの不快なショックが抑えられ、乗り心地は一段とフラットで快適だ。
セレナは全車8人乗り。その極めつけのドッグフレンドリーポイントは2列目席のスマートマルチセンターシートにある。キャプテン、ベンチシート自在のシートアレンジが可能で、小型犬ならキャプテンシート状態で乗せられ、また大型犬であればスマートマルチセンターシートを利用してベンチシート状態にアレンジしてゆったりと乗せてあげることができるのだ。
ちなみに同クラスの4代目トヨタ『ノア/ヴォクシー』は、キャプテンシートを選ぶと中寄スライドができず(先代はできた)、ベンチシート化することはできない。ホンダ『ステップワゴン』は最新の6代目で2列目キャプテンシートを中寄スライドすることができるようになったものの(先代はできなかった)、セレナのスマートマルチセンターシートに相当するものがなく、ベンチシート化したときのシート幅はセレナの1260mmに対して1030mmと狭くなってしまうである(実測値)。
もちろん、2/3列目席用のエアコン吹き出し口があり、犬の特等席の2列目スライドドア部分の窓にはサンシェードが備わるなど、ドッグフレンドリーな機能、装備満載。しかも、犬は2列目席だけでなく、3列目席にも乗車することができ、人と犬、荷物のフォメーションは自由自在。
ララによれば、テールゲートの窓だけが開くデュアルバックドアも、空気がきれいな場所に停め、車内を換気するのに有効。また、デュアルバックドア全体を開ければ、大きなひさしになり、眺めのいい場所にセレナを停めてラゲッジルーム後端をベンチ代わりにして寛げるアウトドアにもうってつけの使い勝手にもドッグフレンドリーポイントを感じさせるわん…と言っている。
ちなみに、Mクラスボックス型ミニバンの中で、2/3列目席フラットアレンジ時にもっとも快適に大人が横になれる(寝られる)のはセレナだ。アウトドアだけでなく、災害時の愛犬同伴の緊急避難場所としてもばっちりである。
「わんダフル カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024 国産車編」で選ばれた三菱 デリカミニ、スバル クロストレック&レイバック、日産 セレナは、ここではララの意見を尊重して順位を付けさせてもらったものの、どれを選んでもドッグフレンドリーカーとして飼い主も愛犬も満足できること必至だ。もちろん、2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤーの国産ノミネート車種であるホンダ ZR-V、N-BOXもなかなかのドッグフレンドリーポイントを持つクルマとしてボクもララも認めるスタイリッシュなSUV、日本で一番売れている軽自動車と言っていい。言い方を変えれば、今年は国産ドッグフレンドリーカーの豊作年ということだ。