愛車を洗車していて知らないうちに付いてしまった正体不明のキズやくすみに気づいたことが無いだろうか? そんな時にまずは試してみたいのがコンパウンドを使ったお手軽リペアだ。
「こんなところいつ擦ったかな?」と洗車していて気づいたことはないだろうか? 意識しないうちに付いてしまったわずかなキズは、愛車のイメージをくすませてしまう元凶のひとつでもある。そのため、気づいたときには即対処しておこう。そんな時にキーワードになるのが浅いキズであること。深い部分までダメージを受けたキズになるとリペアやタッチアップペイントなどの本格的な処理が必要になるのだが、ごく浅いキズや汚れならばコンパウンドを使ったライトな処理が可能だ。そこで今回はコンパウンドを使ったボディ補修について紹介して行くこととした。
そもそもコンパウンドとは液体やペースト状の研磨剤のこと。つまりボディを研磨するためのアイテムなのだ。しかし「ボディを研磨すると傷んでしまうんじゃない?」「研磨剤で磨くのは高度な技術が必要なのでは?」と懸念するユーザーも多いだろうが、そこは心配無用だ。ボディには塗装面の上に多くの場合はクリア層と呼ばれる透明な皮膜が施されている。ここにキズが付いてしまう状態であれば多くの場合はコンパウントでの処理で解決できる。しかもクリア層のキズ(これが浅いキズと呼ばれるもの)を整えるだけなので塗装面に手を加えることは無いので、先の懸念である“ボディを傷めてしまう”ことも無いのだ。しかも作業自体はそれほど難しくないので初めてのユーザーでも十分に対処可能だ。
そこで、まずは作業開始前に準備するコンパウンドの基礎知識から紹介しておこう。コンパウンドには複数の“番手”があって粗目から細目、極細、超極細などが用意されている。目安にするのはこの数字だ(番手)、粗目は#350などで表記される目の粗いコンパウンドのことを指している。方#6000、#8000、#17000など数字が大きくなるほど細目→超極細の目の細かなコンパウンドになっていくという仕組み。この番手選びがコンパウンドを使う上で実は重要だ。サンドペーパー(紙やすり)を使ったことがあるユーザーならわかると思うが、ザラザラが大きい(粗目)のサンドペーパーは研磨する力が強いため少しの研磨で大きく削れる、対してごく細かなザラザラを持つ細目(極細目など)のサンドペーパーは研磨作業に対して削れる量が少ないのが特徴。この違いがコンパウンドにも同様に用意されていると考えれば良いだろう。
では浅いキズに用意するのはどの程度のコンパウンドが適しているのだろう? 粗めは大きく塗装面を削ってしまうので、“浅いキズ”を消すためには極細(#8000程度)や超極細(#17000程度)を用意すると良いだろう。最初は極細でキズ部分を整えた上で、超極細で磨き上げてピカピカに仕上げるという工程を踏めば作業のスピードと仕上がりの美しさを両立できる。もちろん最初から超極細を使って時間を掛けて処理することもできるが、仕上がりまでの時間は大幅に長くなってしまうのは先の説明で理解できるだろう。
カー用品店に行くとさまざまなコンパウンドが販売されているが、必要な番手のコンパウンドを用意しても良いし、キズ消し用に用意されたコンパウンドのセットを使う手もある(複数の番手をセットしているものは比較的使いやすいだろう)。また液体やペースト状などコンパウンドの種類もあるので、タレやすさや広がりやすさなどを考慮して使う場所や使い勝手を考えて選ぶと良いだろう。
さて、次は実際の浅いキズ消し作業について説明していこう。今回コンパウンドを使って処理するのは、あくまでも先にも紹介した通りボディ表面のクリア層(近年クルマではクリア層を持つ場合が多くメタリックやパールなどには必ずと言って良いほど用いられている)限定と考えて欲しい。まずは愛車に付いているキズがクリア層で止まっているのか塗装面まで及んでいるかの判断からはじめよう。簡単なテストとしてはキズ部分に水を掛けてみる。その際に水に濡れるとキズがスッと見えなくなるようならばクリア層のキズと考えても良いだろう。
クリア層のキズだと判断したら作業開始だ。コンパウンドを使った処理を実施する前にまずはシャンプーしてキズ部分の汚れを十分に除去しておこう。その上で用意したコンパウンドを研磨用のスポンジに取りだし(小豆程度)、キズ部分に叩くようにして広げる。その上でキズの部分を中心に縦横方向に磨いていく。最初はあまり深追いせずに少し磨いてはきれいな布で拭き取って磨きの状態を確認するように心がけよう。こうすることでどの程度の磨きで効果が出てくるかの体感で憶えて行くことができるからだ。
ある程度キズが目立たなくなってきたら、用意したさらに細目の番手(超極細など)にコンパウンドを変更して磨きを進める。番手を細かくすると磨く力が弱くなるので、なかなかキズの状態が変化しなくなっていくが根気強く処理していこう。すると少しずつ美しい表面が蘇ってくるのが確認できるはずだ。キズがほとんど見えなくなると同時にピカピカの鏡面状になってくるのがわかるはず。ここまで仕上がったら完成だ。
ちょっと注意しておきたいのは磨き作業の初心者はついついピンポイントでの仕上がりを追求してしまう傾向にある点。ゴシゴシ同じ場所を磨き続けるのでは無く、ある程度磨いたらコンパウンドを拭き取って状態を見る、さらにはちょっと離れたところからクルマのキズ部分を見るという作業を繰り返すと良いだろう。ごく近くで見るとキズが残っていることがわかっても、少し離れるとピカピカの状態だということがわかる。近くで見てもピカピカの新車同然の状態に仕上げるのを目標にするのではなく、少し離れたところから見てキズがわからない状態を完成形に設定すると作業のハードルがぐっと下がるので意識してみると良いだろう。
小さなキズがボディにあるとクルマがくすんで見えてしまうもの。洗車時に気になったポイントを最適なコンパウンドを使って処理してキズ消し作業を実施すれば、ボディの美しさが蘇ってくる。「研磨によるボディ磨きは難しいのでは?」を気負うこと無く、まずは簡単なキズ消し作業を実施してボディをリフレッシュしてみよう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。