ブレーキチューンの要であるキャリパー。その材質や形状などいくつも種類がある。どれが最高というわけでもなく、それぞれ特徴とメリットがある。様々なキャリパーをまとめて解説。
ブレーキはペダルを踏むとマスターシリンダーが押され、そこからブレーキフルード(オイル)が押し出される。その圧力をキャリパーまで伝えて、内部のピストンが押し出されてパッドをローターに押し付けて摩擦させる仕組み。
キャリパーは油圧を受け止めてピストンを押し出す役割があり、剛性が要求されるがバネ下部分になるので少しでも軽いほうがハンドリングは良くなる。いかに高い剛性を持ちつつ軽くするかが要求されているパーツ。
◆キャリパーの特徴1:純正片押し
純正キャリパーのほとんどが片押しタイプ。ピストンは片側にしかなく、外側のパッドはツメで抑えているのみ。きちんと設計されているので内側パッドにも外側パッドにも均一に圧力は掛かる。
しかし、外側のパッドはツメで抑えているだけなので放熱しやすいが、内側パッドは熱を持ちやすい。その温度差もあって内側のパッドから減りやすい。
ボディはスチール製だが重さ的には軽量に仕上がっているので、ブレーキ容量が不足していなければ純正キャリパーのままのほうが足まわりの軽快さは維持できる。
◆キャリパーの特徴2:鍛造2ピース
アフターパーツメーカーのリーズナブルなモデルの多くはこれ。フロントセットで25~30万円くらいが相場。これはアルミ素材を熱を加えながら潰した鍛造材を使い、それを切削加工して製作。キャリパーの内側と外側それぞれを製作してボルトで留めて1つのキャリパーにしている。
メリットは剛性の高いアルミ鍛造素材で製作することで、ブレーキタッチの良さが得られること。高い剛性のわりにはアルミを使うことで軽量に仕上がること。
多くの場合、内側と外側に同じようにピストンが配置されている4ポットや6ポットでパッドのどちらにも均一に力が掛かり、温度も同じになるので同じように減っていく。
ドレスアップとして使う人も多いし、本格的なサーキット走行でも安定したブレーキタッチで扱いやすさは抜群。
◆キャリパーの特徴3:鍛造1ピース(モノブロック)
アフターパーツのキャリパーの最上級がモノブロック。ひとつのアルミ鍛造素材を機械で削り出すことで製作する。継ぎ目なく削り出しで製作するので圧倒的な剛性を実現。レーシングカーに使われるキャリパーの多くもこの製法で作られている。
問題は加工が難しいこと。キャリパーピストンを入れる穴を開けなければならないが、いわゆるドリルでは反対側のキャリパーがあるので加工できない。先端が90°曲がるタイプの特殊な切削機械で加工しなければならないので、加工できる機械が限られる。
素材自体も高いが切削機械も限られ、その加工にも時間が掛かるので必然的にコストが高くなってしまう。価格はフロント用で70~100万円くらい。
ざっくりと分ければこの3種類となる。ブレーキタッチは圧倒的な剛性を誇るモノブロックがもっとも優れているが、2ピースモデルでも引けを取らないくらいの剛性感あるブレーキタッチは得られる。
あとは前後のバランスなども考慮したい。
多くの場合、キャリパーキットとセットでローターも大径になる。ローターが大きくなるだけでも制動力は大きく上がり、そこにキャリパーも強化することでさらに鋭く効くようになる。
フロントだけに大径ローター&キャリパーキットを投入すると、リアの制動力が足りなくなりがち。そこでリアのローターを大きくする手や、前後ともキャリパーキットを投入する手もある。
同じメーカーの前後キットであればもちろん前後のバランスを考慮してある。しかし、近年の電気式サイドブレーキ内蔵リアキャリパー車だとキャリパー交換ができないことが多い。そういった場合は専用の大径ローターキットがあればいいが、もしなければフロントローターのサイズを大きくしすぎないようにして制動力のバランスを取ったほうが無難。
著しく前後バランスが悪くなるとABSが介入しやすくなったりもする。最近のクルマではそういった電子制御が介入して気持ちよく走れなくなることもあるので、バランスを重視して投入したい。
最後にブレーキキャリパーを投入しても短い距離で止まれるわけではない。扱いやすさが手に入るが、絶対的な制動距離はキャリパーよりもタイヤの性能に依存する。常にタイヤが良いコンディションであるからこそ、強くブレーキを踏んで減速できることをお忘れなく。