オイルクーラーといえば走行風で冷やすのが一般的だったが、近年はエンジン冷却水で冷やすタイプが増えてきている。水冷式の利点は空力の良さと置き場所に困らず、さらに温度を安定させられることなのだ。
近年水冷式オイルクーラーが増えている。アフターパーツでも水冷式があるが、とくに輸入車スポーツカーではオイルクーラーの水冷化は著しい。
◆エンジンオイルを適温に保つ「オイルクーラー」
まず通常オイルクーラーはエンジンオイルの温度を下げるためにある。エンジンオイルが熱を持ちすぎて、適正温度よりも高くなってしまう場合に温度を下げる効果を持つ。普通のトヨタ『ヤリス』のようなクルマであれば多くの場合でオイルクーラーは装着されていない。自然と放熱する効果でオイルの油温が100度程度の適温に保つことができるからだ。
スポーツなどになるとエンジンはハイパワーで多くの熱が発生する。そうするとエンジンオイルの温度が高くなってしまう。油温が上がるとオイルは粘度が落ちてしまい油膜切れを起こしやすくなる。ほかにも120度を超えてくるとオイルの成分がダメージを受けて劣化しやすい。オイルの劣化によってもエンジンにダメージを与えてしまうことがあるのだ。
そういったことを防ぐためにエンジンオイルは適温に保ちたい。その適温とは100~120度くらいの範囲。エンジンオイルは温度が低ければいいものではない。ある程度の温度になったときに配合された添加剤が正しく作用したり、粘度が正しく油膜を形成してエンジン内部を保護してくれる。それが適正範囲より高くなってしまうとオイルがダメージを受けるので、エンジン内部もダメージを受けやすい。また、オイルが劣化したら早めのオイル交換が必要になり、ランニングコストの上昇にも繋がるのだ。そこでスポーツカーなどでは、オイルクーラーによって油温が上がりすぎないようにコントロールしているのだ。
◆なぜ水冷式オイルクーラーが選ばれるのか
一般的なのはラジエーターと同じように、走行風を当てて熱を奪う空冷式オイルクーラーだ。空冷式でも性能的にまったく問題はないが、実は意外と制約が多い。
まず、走行風が当たる場所にオイルクーラーのコアを置かねばならない。ラジエーター前に置くのが一般的だが、ラジエーターの冷却性能をスポイルしている可能性がある。オイルクーラーで油温は下がったのに、水温が上がってしまったなんてことになりかねない。
また、フェンダー内に取り付ける場合もあるが、やはりここにも風を当てて、後方は風が抜けるようにしなければ正しい効果を発揮できない。このあたりは空力的な性能も関係してくる。できるだけフェンダー内に空気を留めたくないというのは最近のトレンドだが、オイルクーラーを抜けた風がフェンダー内に排出されると空力的には決して良いとは言いにくい。そこで最新スポーツカーでは少しでも空力的に有利にするという理由もあって、水冷オイルクーラーが増えている。
さらに温度が安定しやすいメリットも大きい。ラジエーター冷却水は90~100度くらいが標準。この冷却水とオイルで熱交換をする。すると、エンジン始動直後は先に温まりやすい冷却水がエンジンオイルを温めてくれる。その後、油温が高くなってくると今度は冷却水がオイルを冷やしてくれる。双方で熱交換するので、暖気も早くなり、油温の上がり過ぎも防げるメリットがあるのだ。
そして、省スペース化ができる点も見逃せない。空気と熱交換するよりも液体同士で熱交換できたほうが効率が良い。100度のサウナに入れても、100度のお湯に手を入れられないのと同じで、液体の方が同じ温度でも熱交換の効率が良い。そのため水冷式オイルクーラーは驚くほど小さなスペースでも十分な効果を発揮する。それでいて走行風を当てなくていいので、エンジンルーム内で完結しやすいのだ。
アフターパーツではクスコから86/BRZ用水冷式オイルクーラーがリリースされていたり、熱交換器専門メーカーのDRLからも86/BRZ用の水冷式がリリースされている。冷却水で熱交換をするためにオイルラインとクーラントのラインを設けなければならず、ホース類の取り回しなど手間の掛かる点もあるが、それ以上のメリットは大きくある。チューニングパーツとしても水冷式オイルクーラーは徐々に増えてきているのだ。