充電サービスを手掛けるユビ電は、2025年までに累計8万台のEVを充電できる普通充電設備の設置をめざす。同社の展開する交流コンセントを活用したEV充電サービス「WeCharge(ウィーチャージ)」は、導入およびメンテナンスコストの低さと運用面での柔軟性に強みがある。
◆家庭での普通充電で十分なEVの日常使用
ユビ電は、ソフトバンクの社内起業制度から生まれ2019年に設立された。EVおよびPHEVの充電サービスであるウィーチャージを展開している。特徴的なのは、家庭用の交流電源に接続したコンセントを活用することだ。
ショッピングモールの駐車場などで目にする急速充電器は、出力の大きな直流電源を使用する。例えば、60kWhの車載バッテリーに50kWで急速充電を行うと約1時間で100%になる。一回の充電に要する時間が短い反面、高速道路のサービスエリアなど需要が集中するケースでは待ち時間が課題になっている。
ウィーチャージは3kW(6kWにも対応)の交流電源を使用するため、同じバッテリーをゼロからフル充電するために20時間(6kWでは10時間)を要する。これについてユビ電の白石辰郎CCOは、「自宅で充電できれば、充電場所の少なさも充電時間の長さも問題になりません」とデメリットないと言う。
「会社から午後7時に帰宅して充電を始めると、翌朝8時の出発時には200km以上走行できるだけの充電ができています。ご自宅にいるので、充電の列に並ぶ必要も、充電が終わるのを待つ必要もありません」と話す。
同社はクルマの走行距離を、一日あたり平均で約23kmと試算している。普通充電を1時間行えば20~30km程度は走行できるため、日常使用には十分と言える。また、同社によるとクルマの平均稼働時間は年間533時間というデータがある。365日×24時間のうち、94%は自宅や職場などの駐車場に停まっている計算になる。この時間内に充電できれば、理論上クルマの稼働には影響がない。
◆クルマ1台に1つの充電ポート
このシステムは一般家庭用の単相200V電源を使用する。(200Vは、IHクッキングヒーターや食洗器など向けに、分電盤までは全家庭にひかれている)自宅の駐車スペースに充電用コンセントを設置し、クルマをケーブルでつなげば充電できる。
初期投資も設置後のメンテナンスコストも急速充電器に比べて安価なため、ユビ電は集合住宅や会社などの大型駐車場もターゲットにしている。同社は7月4日、福岡市のマンション駐車棟にある429区画すべてに充電用コンセントを設置することが決まったと発表した。
◆電力の需給ひっ迫へのソリューション
充電コンセントに電力を供給する“スマート分電盤”は、同社のクラウドに接続している。さらに電力系統(グリッド)と連携することで、 余剰電力の活用やピークシフトなどを通じて需給の安定化にも貢献できるという。例えば、接続されている100台のクルマを10台まで同時に充電し、1台終わるごとに次の1台の充電を始めるといった制御ができる。ピーク電力を避けながら翌朝までにフル充電するなど、クルマの使用方法に応じて柔軟にコントロールすることもできる。