“家族の時代をはじめよう”が、初代『バネットセレナ』のキャッチコピー。自ら“ファミリービークル”を名乗り、その後のミニバンの先駆けとなったクルマでもあった。
1BOXだった『バネットコーチ』(C22型)に対して、バネットセレナ(C23型)で大きく変わったのは、短いノーズを付けた新しいシルエットだった。
ファミリー向けのクルマとしては異例だったが、カタログを開くと車両の透視図が見開きで載っており、前輪が前出しされ、1列目シートの下にエンジンがあるレイアウトがよくわかる。このデザインは、それまでの1BOXがキャブオーバー型と言われたのに対し、セミキャブオーバーと呼ばれた。
FR(フルオート・フルタイム4WDも設定)、2735mmのロングホイールベースなどで、高い走行安定性も実現していた。搭載エンジンはガソリン2種とディーゼルのターボとノンターボ。メイングレードのリヤサスペンションにはマルチリンク式が奢られていた。
外観デザインは非常に垢抜けたもの。いわゆる箱だった1BOXとは違い、丸みを帯びた優しくシンプルなスタイリングが魅力だった。
インテリアもクリーンなイメージ。そのクールな雰囲気を伝えるためか、カタログ写真では家族を模したモデルが登場するシーンは一切なかったのは今見ても新鮮だ。とはいえ当時の多人数乗用車らしく、3列シートは対座、フルフラットを始め、多彩なシートバリエーションをもっていた。
またオーテックジャパン(当時)が手がけた、その後の人気車となったエアロパーツ装着の「ハイウェイスター」、アウトドアテイストの「キタキツネ」(写真のカタログは1996年のもの)も初代から登場していた。