1983年というと、今から40年前。この年にいすゞから登場したのが小型中級セダンの『アスカ』。同社の『フローリアン』の後継車種となる、新たにFFを採用したモデルだった。
車名は日本文化が開花した飛鳥時代にちなんだものだった。ベースとなったのは、当時のGMファミリーのオペルが中心に開発したグローバル構想に基づく“Jカー”で、『オペル・アスコナ』(西ドイツ=当時)を始め『ヴォクスホール・キャバリエ』(イギリス)、『ホールデン・カミーラ』(オーストラリア)、『シボレー・キャバリエ』など(アメリカ)の、いわば兄弟車が存在。いすゞはそれら全世界のGMファミリーにFF専用トランスアクスルを供給する役割も担った。
アスカはいすゞ独自に開発されたモデルで、クリーンなエクステリアデザイン、コンパクトなパワートレインとサスペンションによる広い室内空間などを実現。実車は、フロアトンネルが低くスッキリした足元や、2580mmのホイールベースによるゆとりの大きな後席トランクルームなどが印象的だった。
エンジンは新たに“シグナス”の呼び名が与えられ、今では非常に贅沢だが、当初からガソリン4機種、ディーゼル1機種の計5機種を用意。2リットルのガソリンエンジンにはターボの設定があったほか(4ZC1-T型)、2リットル・ディーゼルにもインタークーラー付きターボ(4FC1-T型)が追加された。
また1984年になると“NAVi5”と名付けられた、5速マニュアルトランスミッションのギヤチェンジそのものをクルマが行なう先進のメカニズムを投入。セレクトレバーはHパターンで、走行状態に合わせて1、2、D3、D5を選んで走らせる方式だった。
また『ピアッツァ』や『ジェミニ』とともに、専用チューンのサスペンションと内外観デザインの“イルムシャー”も設定され、ヨーロッパナイズされたサスペンション性能で魅力を放った。