メンテナンスの中でも安全性を左右する最重要項目のひとつであるブレーキのメンテナンス。パッドの減りなどを定期的にチェックしていち早く異常を察知し常にクルマの安全性をキープしよう。
クルマのブレーキは近年はディスクブレーキが主流になっている。ディスクブレーキの仕組みは比較的単純で、円盤状のブレーキローターをキャリパーにセットされたブレーキパッドで両側から挟み込んで摩擦抵抗を発生させ、車軸の回転を制動してブレーキングするというもの。単純な構造なので信頼性も高く、命に関わるブレーキを安心・安全なものにしている。
比較的トラブルが少ないブレーキだが定期メンテナンスは必須だ。制動するためにブレーキパッドとブレーキローターはブレーキングのたびに擦れ合っているので摩耗する(減っていく)。摩耗限界を迎えると制動力が著しく落ちてしまうのでその前に交換する必要があるのだ。そこで今回はブレーキのメンテナンス(摩耗のチェックがメイン)を紹介して行くこととした。
国産車の場合はブレーキパッドが減っていくバランスに作られていることが多く(輸入車ではローターも大いに減るバランスの場合も多い)、パッドの減りを中心に日常点検でチェックするのがベーシックなスタンスだと考えておこう。
そもそもブレーキパッドは新品時には厚さ=約10mmあるのが一般的。これが1万km走行ごとに約1mm減ると言われている(環境や走り方でかなり変動する)。そしてブレーキパッドの厚みが2~3mmまで減ると交換時期と言われている。ギリギリまで使うのでは無く、安全性を考えて早めの交換を実施するのが良いだろう。しかしブレーキパッドの減り方は乗車人数やストップアンドゴーの多さ、積み荷の配分などで変わってくるのがやっかい。一般的にはフロント側が先に減る傾向にあるのだが、常に重量物を載せているクルマではリアが先に摩耗限界を迎えることもある。
そこで、距離だけを基準にブレーキパッドの交換時期を見定めるのでは無く、何か手がかりとなるものが欲しくなる。そのひとつがパッドウェアインジケーターと呼ばれるものだ。ブレーキパッドの脇の取り付けられている金属製のプレートで、ブレーキパッドが減ってくるとローターに接触して「キーキー」と音を立てることになる。ブレーキペダルを踏み込んで、ブレーキまわりからこの音が聞こえるようになったらブレーキパッドは限界値を向かえていると考えよう。そのまま乗り続けるとブレーキパッドの摩材が無くなり、やがて金属のバックプレートが露出して直接ローターに接触してしまう。こうなるとローターにも大きなダメージを与えるのでブレーキパッド/ブレーキローターの同時交換が必要になる可能性もあり出費がかさんでしまうことになりかねない。なによりブレーキパッドが減った状態で乗り続けていると制動力が落ちて危険なので、キーキー音が発生したら速やかにパッド交換を実施しよう。
このように機械式のパッドウェアインジケーターの場合はキーキー音で判断するのだが、高級車の中にはパッドの減りを知らせるインジケーターが設置されている電子式もある。こちらも機能としては機械式と同様なので警告ランプが点灯したらすぐにパッド交換を実施しておこう。
次にブレーキパッドの減りを日常点検の中で確認する方法は無いのだろうか? もちろんキャリパーを目視してパッド残量を確認することはできるのだが、タイヤを外したりジャッキアップする必要があるので簡単な点検では難しい。そこで手がかりになるのがブレーキフルードの残量チェックだ。エンジンルームを空けるとブレーキフルードのリザーバータンクが見える。ここにはアッパー/ロワのレベルゲージが設けられていて外から見ても減りがわかる仕組みになっている。このフルードの残量がブレーキパッドの減りと比例しているのだ。つまりブレーキパッドが減るとブレーキフルードの液面が下がることになる。これでどの程度ブレーキパッドが減っているかはある程度推測できるだろう。日常点検ではこの程度は確認しておけばブレーキパッドの減りを事前にチェックでき、ブレーキのトラブルを未然に回避できるだろう。
ところでブレーキのメンテナンスは基本的には認証工場(ディーラーや大手カー用品店など)で交換作業をオーダーすることになる、これはブレーキ関連の分解整備になるので国が認証した工場でしか交換整備は認められていないからだ(ただし自分のクルマを自己責任でメンテナンスする分には問題ない)。ただしブレーキは安全走行を左右する非常に重要なパーツなので一般的なユーザーはプロに任せるのが得策だろう。ユーザーができるメンテナンスとしては、いち早くブレーキパッドの減りを見つけてメンテナンスに出すことに徹するのが良いだろう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。