ボッシュは9月20日、電動ブレーキブースターである「iBooster」の国内生産を開始したと発表した。同製品は世界で年間800万台ほど生産されている。これを2026年までに1100万台にまで拡大させ、このうち60%は日本向けになる。
ボッシュ(日本法人)代表取締役社長 クラウス・メーダー氏は、発表に先立ち「日本は自動化、電動化車両において世界の最先端をいっており、その技術に貢献するiBoosterを日本で製造、提供できることを誇りに思う」とあいさつした。
ロバート・ボッシュのシャシーシステムコントロール事業部製造担当役員であるウルリヒ・シュミット氏は、日本で生産する理由について、国内の顧客の要求に迅速かつ柔軟に対応するため、供給の安定化を挙げた。背景には国内で高まるiBoosterの需要だ。iBoosterは、従来型のブレーキブーストと違い、電動ポンプによってブレーキラインの昇圧を行う。従来型はエンジンの負圧を利用して昇圧を行うが、iBoosterはエンジン(内燃機関)を搭載しないFCVやEVにも使える。
日本は諸外国と比べてEV化が進んでいないが、衝突被害軽減ブレーキのブースターとして電動式のブースターが好まれる傾向がある(ボッシュ 専務執行役員 シャシーシステムコントロール事業部長 松村宗夫氏)。EV以外でもiBoosterを採用するOEMが多い。その理由は、ADAS機能実現のため、パーキングブレーキの電動化(EPS)が進んでいるからだ。ブレーキシステムの電動化、バイワイヤー制御が増えると、万が一のバックアップや別系統でのブレーキ機構が必要になる。ブレーキシステムの冗長構成のため、EV以外でも電動式ブレーキブースターを採用する例が増えているということだ。
現在、ボッシュのiBoosterを製造している工場はドイツ、ポーランド、メキシコ、中国、そして日本の5拠点だ。ドイツ・ポーランドはおもにEU圏内向けに生産を行っている。メキシコが北米市場向けを担当する。中国がアジア向けの生産を行っていた。今回日本が加わったことになるが、日本(栃木工場)では日本向けの生産を行う。他工場との違いは、それだけではない。国内OEMの多様な注文に応えるため、従来品より小型化した「iBooster Compact」も開発し、その組み立てもできる混流ラインになっている。
従来型のブースターは、本体の大きさがブレーキアシストのストロークや昇圧に影響するが、電動式のiBoosterは小さくしてもスペックを維持しやすい。内部の機構や部品は大きく変えず、ハウジングを工夫することで小型化を実現した。軽自動車やコンパクトカーなどボンネット内のスペースが限られる車種にも対応する。