エンジンにもっとも重要なのはオイル。オイルが少ないのは超危険だが、入れ過ぎもトラブルを起こす原因になる。いつ、どんなときに、どれだけ入っていればいいのか。
◆交換指定距離より前でも減ることはある!!
エンジンはオイルが潤滑していて、オイルがなくなるとたちまち壊れてしまう。壊さないための最重要科目がオイル管理だ。最近はロングライフオイルが普通になっていて、1万5000kmごとの交換指定なども普通になっている。自動車メーカーがそう言っているわけで、守っていれば基本は壊れない。
しかし、オイルの量は確認しておきたい。走行距離を重ねるとエンジンは徐々にオイルが減りやすくなる。それは各部のクリアランスが広がってくるので当然のこと。また、坂道で負荷を掛けたり、高速道路で加速したり、サーキット走行なども当然だが、オイルが減りやすくなる。そうなると交換指定距離以内でもオイル量が徐々に減ってくる。少し減るくらいなら問題ないが、大きく減るとオイルポンプがオイルを吸い上げられなくなってしまう。そうなるとエンジン内にオイルが供給できず、金属同士が接触して摩耗。エンジンブローにつながってしまう。
オイルが減るだけでエンジンが壊れてしまうのである。そして、そのようにブローした場合、軽度なら直せるが、ひどいとエンジン内部のあらゆる箇所がダメージを受けるので修理は不可能。エンジンごと新品か中古品に交換することになる。
◆オイルの適正量の基本はFラインだが……
そこでオイル量を点検しておきたい。基本はレベルチェックするバーのF(フル)のラインに合わせること。減るリスクは先程のとおりだが、入れ過ぎもリスクになる。オイルを入れすぎると、クランクシャフトがオイルを多量にかき混ぜることになる。そこからクランクケース内にはオイルが霧状に捲き上げられてしまう。このクランクケース内の空気はブローバイガスとして、インテークにつながっていてそこからエンジンに送り込まれる。未燃焼ガスを再燃焼させるために必ず装着されている機構だ。
通常は未燃焼ガスだけがインテークに送り込まれるが、オイルを入れすぎているとそこにオイルが混ざってしまう。インテークはオイルでドロドロになり、そこからエアフロセンサーなどを汚して不調をきたしたり、エンジンにオイルが入り込んで白煙を吹いたりもする。オイルが少ないよりも重大なトラブルになるわけではないが、入れすぎても良いことはない。オイルが減るクルマのオーナーだと「どうせ減るからいっぱい入れちゃえ」となる気持ちもわかるが、そこそこにしておきたい。
◆サーキット走行ではFラインよりももっと入れることもある
これは特殊な例だが、サーキット走行ではFラインよりももっと入れることもある。それは強い前後左右のGによってオイルが片寄ってしまい、オイルポンプが吸わなくなってしまう車種があるから。
サーキット走行中にオイルが吸えなくなり、油圧が下がるのは重大な問題。そこでFラインを超えて、Fの文字が隠れるくらいまでオイルを入れることもある。だが、先述の通り、インテークパイプ内にオイルが流れて汚れたりするので、そういったメンテナンスもセットで行う必要がある。また、片寄りを防ぐためにオイルパン内部にバッフルを設置することもある。オイルが片寄って吸えなくならないように仕切り板(バッフル)を入れるのだ。
◆逆にサーキットでオイルを減らすこともあるが……
ワンメイクレースのような同じクルマで少しでも速く走りたい場合、実はオイル量をギリギリまで減らすことがある。オイルを減らすとクランクシャフトがオイルをかき混ぜなくなるので、その分わずかに抵抗が減って、加速が良くなるのだ。しかし、これは油圧計を付けて油圧がドロップしないか検証しながら少しずつオイルを減らすテストがあるからこそできること。いきなりオイル量を減らすのはリスクしかない。
◆気をつけたいのはオイル量を見るタイミング
オイル量チェックしていただきたいが、気をつけるべきはそのタイミング。エンジン停止直後はまだオイルが落ちてきていないので、5分ほど待ってからが好ましいと言われる。しかし、この落ちてくるスピードが車種によって全然異なる。一般的に直列4気筒などはすぐに落ち着くが、スバル車のほとんどが搭載する水平対向エンジンはヘッドが両サイドにあり、しかもオイルパンとの高低差も少ないのでなかなかオイルが落ちてこない。
エンジン停止後、5分くらいでオイル量が適正になるように調整すると、翌朝見てみるとFラインのはるか上までオイルが入っているなんてこともある。当日と翌日始動前にオイル量を確認して、あまり変わらないからエンジン停止してしばらくしたら確認してもいい。翌日に見るとすごくオイル量が増えるエンジンなら、そのときにFラインになるように調整してもらいたい。