NTTデータ経営研究所と京都市は5月30日、四条通沿道(京都市)のタクシーの駐停車マナー向上を目的に「ナッジ」を活用した実証実験で成果があったと発表した。
四条通では、一部のタクシーによる交差点や横断歩道付近での客待ち、四条通本線(駐停車禁止)上での客待ち停車などの交通違反が多発し、近隣バス停におけるバス発着の妨害や渋滞を発生させるなどの問題が発生している。実証実験では、人間の心理的な特性を踏まえた工夫でより良い行動を促す「ナッジ」を活用したタクシー駐停車マナーを改善する実証を行った。
ナッジ(nudge)とは、行動科学の知見を活用して、人々のより良い行動を後押しする政策手法のこと。「nudge=肘でそっと押す」という原義の通り、禁止や罰金といった選択肢の制限をせずに、人間の意思決定特性を踏まえた「ちょっとした工夫」で、人々の行動に変化を起こす。2017年にノーベル経済学賞をとった行動経済学者リチャード・セイラーが、キャス・サンスティーンとの共著『Nudge』(2008年)において提唱した。
具体的にはナッジの知見を活用した看板を、四条河原町交差点南東角に設置し、タクシーの違法停車時間を測定した。タクシー乗務員には違法停車の中止、移動を促し、利用者には違法停車中のタクシー利用の回避、タクシー乗り場への移動を促進するのが目的。
この結果、看板設置前と比べて設置後の1日あたりの違法停車時間の合計が約9割減少していたことが明らかになった。
また、ナッジの知見を活用した看板を、四条通沿道タクシー乗り場2カ所に設置し、規定台数を超えた車両の台数を測定した。この結果、看板設置前に比べ、設置後に規定台数を超過して停車するタクシーの台数が、1日当たり西行で約7割、東行で約3割減少した。