今や高速道路の通行料金支払いにETCを使うのはすっかり日常となった。そんな中、“次世代型ETC”として10年ほど前に追加して登場したのが「ETC2.0」で、近年、この利用料率が着実に上がってきているという。ETC2.0を選んだ場合のメリットを考えてみた。
ETC2.0に対応する路側アンテナ(ITSスポット)は全国の高速道路や有料道路の約1700カ所に、おおむね10~15kmおきに設置されている。一度の受信でより多くの情報が得られることが最大のポイントで、それを活かした様々なサービスが実用化、または実証実験を通して展開されてメリットを生み出している。
◆利用するメリットは様々
一つは首都圏にある「圏央道」での通行料金の2割引きが適用されることだ。その条件は圏央道を経由するか、圏央道内のICで入出路するだけ。ただ、深夜割引きなど、他の割引きが加わった場合、二重で割引きされることはない。また、その場で割引きされるのではなく、クレジットカードの決済時に割り引かれた金額で請求される。
二つめは「道の駅」利用のために高速道路を一時退出しても、目的地まで高速道路を降りずに利用した場合と同じ料金で高速道路を継続利用できる(23カ所限定)ことだ。高速道路を利用時は必ず“初乗り料金”として150円が加算されるが、対象のICやスマートICでは、退出後1時間以内に同一ICから同じ方向へ再流入すれば、この初乗り料金が免除されるのだ。
三つめは交通情報の取得だ。実は国土交通省は2022年に、高速道路上で提供している電波ビーコンによる交通情報を打ち切る計画でいる。これまで高速道路での渋滞回避は電波ビーコンからの情報が元になっており、それ以降はこの役割をETC2.0が担っていくことになっているのだ。すでに新設される路線では電波ビーコンは敷設されておらず、新東名もその対象となっている。
なお、渋滞回避に関して、FM多重で提供される「VICS-WIDE」で対応できると勘違いしている人もいるようだが、その対象は一般道のみで高速道路は対象外なので注意したい。ただ、気象情報などの特別警報の表示は高速道路上を走行していても表示される。
さらに輸送会社には荷待ち時間の現状が把握できるサービスがあり、バス会社に対しては位置情報を自動取得できる「高速バスロケシステム」を提供する実証実験など、その特性を活かしたサービスの展開が進んでいるのも事業者にとっては大きなメリットだ。
◆高額な導入設備費が普及の足枷に
一方で、ETC2.0ならではのメリットとされていながら、実際は役に立っていないものもある。1000km先の交通情報が得られるとするが、これはカーナビのスペックに依存しており、現状では対応できるカーナビが存在しない。全国のSA/PAに設置された「ITSスポット」は当初、様々なドライブ情報や音楽データなどもダウンロードできることを謳っていたが、今やスマホの方が便利になり、データ更新すらされていない現状もある。
ETC2.0車載機の導入費用が割高なのも課題だ。現状ではETCと比較してETC2.0は1~2万円ほど費用がよけいにかさむ。個人的にはETC2.0に一本化して、より低価格で提供されることを望みたいところだが、現実はそう簡単にコトは運ばないようだ。
また、ETC2.0のメリットとして謳われたガソリンスタンドや駐車場などでの料金決済も遅々として進んでいない。その要因としてあるのが、一つは導入設備費が高額であることだ。簡易設備としても数千万円はかかるとされ、それなら電子マネーなどを活用した方がはるかに安い。
◆自動車に乗ったまま代金などを支払える「ETCX」に期待
そんな中、ETC2.0に限定せずETCでも決済が可能となる決済サービス「ETCX」が登場した。認証処理などをすべてクラウド上で行なう「ネットワーク型ETC」とすることで、導入コストを大幅に引き下げている。利用者はあらかじめETCカードとクレジットカードを紐付ける登録をしておく必要があるが、一度登録すればETCと同様、乗車したままで決済が可能になる。ただ、利用時は車両を一旦停止する必要はある。
とはいえ、高速道路での電波ビーコン停止期限が迫っている状況下で、通行料金の決済としてこれから選ぶとすればETCではなくETC2.0になるのだと思う。