『シャレード』の初代モデルは、1977年11月に、4ドアセダンだったそれまでの『コンソルテ』の後継車種として登場。ヨーロッパ車のようなFFの2ボックスのリッターカーというスタイルと、広い室内空間を“5平米カー”と謳っていた。その後継車として’83年1月に登場したのが2代目。“広くて小さい快適な乗用車”を発展・進化させ、スタイリングは初代から一転、角張ったものに。搭載エンジンは初代同様に3気筒のガソリンエンジンのほか、世界最小の触れ込みで3気筒のリッターディーゼルも設定し、後に同ターボも追加した。今回、取り上げるのは、高性能版のガソリンターボに追加設定された「デ・トマソ ターボ」だ。◆イノチェンティ・ミニを彷彿とさせる“イタ車”テイストカタログには“親愛なる日本の皆様へ”で始まる創始者・アレッハンドロ・デトマソ氏のレターが挟み込まれているが、デ・トマソというと、60~70年代の『マングスタ』『パンテーラ』『ロンシャン』などが思い浮かぶほか、『イノチェンティ・ミニ』があり、このモデルにダイハツ製エンジンも搭載、少数が日本に輸入されたこともあった。デ・トマソ ターボはもちろん80ps/12.0kg・mの性能を発揮するCBー50型3気筒エンジンが売りで、カタログにも「あのイノセンティにも搭載されて世界注目の3気筒・1リッターエンジン」のフレーズが踊る。カタログはなかなかマニアックで、“RHB32型(IHI)製ターボチャージャー”“タービン径39mmの超小型・軽量、A/R14の高出力設計”“常用回転数190,000rpm、許容最高回転数230,000rpmの能力を持つ超高速型ターボ”といった記述が並ぶ。大容量1リットルのサージタンク、ウェイストゲート・バルブ、水冷式エンジンオイルクーラー、デュアル・エクゾーストパイプなどのスペックもマニアにはたまらなかったはず。サスペンションも強化型の“ターボ・サス”で、これは非デ・トマソのターボ車にも採用された。それから、デ・トマソ ターボで見逃せないのが、ほとんど“イタ車”というほかない、コダワリのアイテムが装着されていた点。具体的には「カンパニョーロ」のマグネシウムホイール、「ピレリ」のP8タイヤ、「モモ」の本革巻きステアリングホイールがそれ。まさに三種の神器といったところだが、前述のようなイタリアとの関係があったからこそのことだったであろうし、イノチェンティ・ミニに似た当時の『シャレード』は、それらをごく自然にこなしていた。ちなみに「デ・トマソ」は4代目でも設定があり、こちらではナルディのステアリング(GARA3をベースにホーンパッドを専用化)、レカロシート(LX-Mをベースにポジションを専用化、ヘッドレスト前後と上下調整式)が与えられた。
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