「あんなクルマもあったなぁ」「いい時代だった」…当時、憧れを抱いて手にしたカタログのページをめくりながら“在りし日”を振り返る。新連載『懐かしのカーカタログ』第2回目は、いすゞ『ビークロス』だ。◆早過ぎた超スタイリッシュSUV今でこそスタイリッシュなSUVは数多い。けれど『ビークロス』が登場した当時、まだゴツいクロカン4駆が中心で、乗用車派生の4WDもチラホラと出始めた頃。その中で月面探索車のような(!?)『ビークロス』は、とにかく際立った。1993年の東京モーターショーのコンセプトカー『ヴィークロス』が元。しかし乗用車(当時の『ジェミニ』)ベースから、量産型では『ミュー』や『ビッグホーン(ショート)』をベースにし、ボディサイズもエンジンもひとまわり大型化した。が、ショーモデルさながらのスタイルを通したのは、初代『ピアッツァ』や、ひいては『117クーペ』と同様の、いすゞのこだわりでもあった。今だから言えるが、スタイルング重視でルーフが低かったから、僕は初めて実車の運転席に乗り込もうとした際、勢い余って傾斜したAピラーに頭をぶつけた。SUVは四角く屋根も高いもの……そんな感覚が染みついていたからかもしれない。ついでながら、スペアタイヤは約7kg軽量化したというテンパータイヤながらテールゲートにマウントし、外から見る分にはかっこよかったが後方視界は絶望的で、そのために当時はまだ珍しかったバックカメラが用意された。外観に比してインテリアはデザイン控えめだった。インパネは『ミュー』をほぼ踏襲したもので、落ち着いていると言えばそうだったが、気分の高揚は控えめだった。ただしmomoのステアリングやレカロシート(トレンド)を採用。スペシャルティカー的な装備の充実度は手当てされていた。3.2リットルのV6を載せ、足回りにはアルミ製モノチューブ別体タンク式ショックアブソーバーを装着。駆動方式にトルク・オン・デマンド(電子制御トルクスプリット)式4WDを採用する走りは、低速から豊かなトルクを活かした余裕の力強さと、オンロードでも山道を想像以上に軽快に走った……そんな記憶がある。といっても『ビークロス』ではやはりスタイリング関係の印象が鮮烈。“プレミアムカラープロデュース25”と名付けられた、標準色5色に加え、特注色を何と20色も用意し、ユーザーに自分だけの1台を作る楽しみを味わわせてくれた。叶わぬ夢かもしれないが、今、もしもいすゞの手でこの『ビークロス』が蘇ったとしたら、どんなクルマになるのだろう? 内外の多くのSUVがひしめく現代でも“早過ぎた超スタイリッシュSUV”の存在感は変わらない。
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