【一時停止線の怪】私に限らず世の中のドライバーの疑問のひとつにあるのが、「なぜ一時停止線は、あんなに手前にあるのか」だと思う。特に一時停止違反で反則切符を切られた人にしてみれば、「あんなところで停止したって、左右から来るクルマなんかちーっとも見えないだろう。なに考えてんだ、ケーサツ!」と、黒い言葉を口にした人もいることだろう(注・私ではありません)。住宅地の交差点には、たまに、交差する道の双方に一時停止線が設けられているところも見かけるけれど、「両方につけたら優先がはっきりしない」と警察庁も気づいたらしく、現在はこうした規制は行われていない(現存するものは、ころころ変えて混乱することを避けるためか、そのままにするようだ)。一般的に、信号機のない交差点やT字路などで、優先道路へと進入する前、非優先道路側にあるのが一時停止線である。そして、その線は「そんなところで停止したって、左右から来るクルマがぜんぜん確認できない」という位置にあることが多い(岩貞調べ)。なぜなのか。◆停止線が交差点よりも「かなり手前」にある理由警察庁の言い分は、「個別具体的に道路交通の状況に応じて、停止線を設置しております」なのだけれど、それじゃさっぱりわからないし、一時停止しようという気持ちがこれっぽっちも起きにくいので、どういう理由でどういう状況に応じているのか聞いてみた。警察庁の理由は、私が解釈するところによると大きく分けてふたつ。ひとつめは、停止線が優先道路のぎりぎりのところにあったら、クルマのノーズ(鼻先)が、うっかり停止線より前に出ちゃって、優先道路の交通に影響を及ぼす危険性があること。最近は軽自動車などのコンパクトカーが売れていて、ノーズは短くなってきているし、セダンタイプも視認性がかなり向上している。とはいえやはり、ノーズがちょいっと出たら、危険度が上がるのは事実である。なので、ちょっと手前かもしれないけれども、一時停止線でまず確実に停止し、そこからは、そろりそろりと前進しながら、左右確認しましょうね、ということだ。ちなみに、よく言われている「二段階停止」は、警察庁が言っているわけではなく、どちらかというと教習所や安全運転講習会系から出た言葉らしい。◆人は状況判断をしながら走っているふたつめの理由は、優先道路側から右左折して入ってくるクルマへの対策である。優先道路を走っているクルマが左折、もしくは、右折してくるとする。もしも、一時停止線が前のほうにあり、そこにクルマが停止していると、右左折してくるクルマが曲がり切れないというわけだ。細い道に右左折して入ってくる路線バスのために、信号がある交差点でも停止線がずーっと手前にひかれているケースを見たことがないだろうか。これと同じ理由である。とはいえ、こういう状況の場合、実際はどうやっているかというと、譲り合い精神を持つ我々ドライバーのこと。一時停止線に止まっているクルマを行かせてから、優先道路側にいるクルマが右左折をする、という対応をすることが多いような気がする。人間は、状況判断をしながら、上手に道交法を活用しながら走るのだ。でもこれ、自動運転車両が走るようになったら、どうなるんだろう? やはり一時停止線は、ずーっと手前の方がいい……んだろうか。こうして理由を聞いてみると、一時停止線がなぜあの位置なのか、てきとーではなく、ちゃんと意味があってひいているのね(当たり前か)。◆若いうちから、ちゃんと止まるクセをつけるところで、高齢者による一時停止無視の事故が多く発生している。東京大学の小竹元基先生によると、若いころは、てきとーな一時停止をしても、反射神経がいいので、事故にならずに対応できていた……のかもしれないけれど、年齢を重ねると反射神経が落ちて事故につながる、のだそうだ。小竹先生曰く「若いうちから、ちゃんと止まるクセをつける」と、高齢になっても、ちゃんと止まれるようになるらしい。これを聞いた当日から、健康寿命はもとより運転寿命も伸ばしたい私は、これでもかってくらい一時停止線で停まっている。一時停止線の位置の理由がわかっても、相変わらず手前すぎると思ってしまうのだけれど、それでも、止まることで事故のリスクは確実に減る。しっかり自分の習慣にして高齢期を迎えようと思っている。岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
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