多くの人にとって車の修理は一生に何度も経験することではないはずだ。そんな滅多にない経験の中で、いかにして修理を依頼するお店を選ぶべきだろうか。悩ましいのは修理工場の良し悪しを測る“モノサシ”がないこと。結果、なんとなく車を購入したディーラーや保険会社に紹介された工場で、という流れに落ち着くのが一般的だろう。◆アフターマーケットにおいて存在感を増す「テュフ ラインランド ジャパン」そんな中、オートアフターマーケット(修理や整備など販売後に生じる各種サービスに対する市場)の業界内で、感度の高い自動車整備業者の注目を集めているのが「テュフ ラインランド鈑金塗装認証(以下、テュフBP認証)」だ。国際的な第三者機関であるテュフ ラインランド ジャパン株式会社(以下、テュフ)が、“良い自動車修理工場の見える化”をするために、自動車修理に必要な設備や技術力、社員が働く環境や法令遵守などについて厳しい基準で監査し、それらをクリアした修理工場に認証を与えるプログラムである。テュフBP認証にはプラチナとゴールドがあり、どちらも「最新かつ高い品質の修理を行える工場」の証明である。最上位のプラチナは「水性塗料に対応」や「アルミを含めた大型の欧州車を修理できる作業スペースや設備、修理品質の社内管理体制の確立」など、ゴールドよりもさらに高い基準となっている。◆テュフ ラインランドとはこの国際的な第三者機関なる「テュフ ラインランド」とは一体どのような組織か。テュフ(TUV ※Uの上には点々が着く)とは技術検査協会を表すドイツ語の頭文字をとった言葉で、ラインランドはライン川地方の呼称である。本社のあるドイツをはじめ、フランス、スペイン、チリ、アルゼンチン、ラトビアで既に車検制度を行なっており、最近ではミャンマー、南アフリカといった新興国で車検制度の立ち上げを行なっている国際的な組織だ。本社のあるドイツでは、車検を取得することを『テュフする』と言う位、誰もが知っている存在だという。また、自動車文化貢献にも力を入れており、世界的に有名なサーキット ニュルブルクリンクの管制タワーの命名権を有し、同サーキットを走るレーシングカーの車検も行なっているというと、レース好きのユーザーにもテュフの信頼性が伝わるのではないだろうか。◆日本最大級の鈑金塗装工場ネットワーク「ビッグモーター」もテュフBP認証を取得日本においてもつい先日、「自動車に関するすべてのことをサポートする“ワンストップサービス”」という独自のビジネスモデルを強みに、現在全国300店舗以上の中古車買取・販売店を展開するビッグモーターが、鈑金塗装工場を有する29店舗すべてで、テュフBP認証のゴールド認証を取得したと発表があった。ビッグモーターは直接経営の鈑金塗装工場ネットワークとしては日本最大級であり、そのインパクトは絶大だ。六本木ヒルズにあるビッグモーター本社で行われた共同記者説明会には多くのメディアが訪れていた。説明会で、株式会社ビッグモーター サービス・BP本部 大賀一哉本部長は、「これまで中古車業界においてビッグモーターが取り組んできた“お客様に対し透明性を示す”という部分が鈑金塗装部門にも必要だと感じました。ユーザー視点に立ったとき、本当に良い工場はどこなのか、判断できる材料が整っていない業界だからこそ、お客様に安心して車を預けて頂ける“工場の品質”を伝える手段が欲しいと思い、世界基準の工場として厳しい審査を設けているテュフの認証に臨みました。」とテュフBP認証を取り入れた経緯を説明した。◆輸入車整備においてもテュフの名が広まるさらにその数日前には、輸入車整備ネットワーク「ドクター輸入車」を運営するICIN株式会社(以下、ICIN)から、テュフによる工場認定制度「Dr.輸入車プロフェッショナル工場認定」の展開を2019年8月より開始すると発表があった。ドクター輸入車は、2017年3月から営業を開始し、現在全国83店舗へ拡大している輸入車整備ネットワークで、輸入車の乗りやすい環境の構築とメカニックがドクターと呼ばれる社会の創造を目指している。ICINとテュフが自動車アフターマーケット監査の経験を活かして共同で策定した「Dr.輸入車プロフェッショナル工場認定」は、プラチナ・ゴールド・シルバーの3ランクに分かれており、この認定を通じて、加盟店のレベルアップを図るとともに、ユーザーに選ばれる輸入車整備工場ネットワークを目指すという。◆認定と認証お気づきの方もいるとは思うが、テュフは“認定”と“認証”という非常に似通った言葉を意識して使い分けている。ドクター輸入車が展開していく認定とは、「企業、団体が定める独自基準に基づき、第三者機関がその事実を確認すること」であり、ビッグモーターが取得した認証とは「第三者機関が、公の基準に基づきその内容を確認し、認証すること」と定義している。認定でいうと、テュフは現在7ブランド(BMWミニ、ポルシェ、ジャガーランドローバー、フェラーリ、ベントレー、GM、VW)の鈑金塗装工場監査を行なっているが、監査の基準を決めているのはあくまで企業・団体である。また、厳しい審査に基づく高い技術力を誇る自動車修理工場ネットワークとして知られるBSサミット事業協同組合も、独自に設けた基準に対する監査プログラム「エクセレント車体整備工場」認定制度を策定している。それに対して認証とは、今回ビッグモーターが取得したテュフBP認証のように、第三者機関であるテュフの定めた基準に基づき監査が行われる。テュフではBP認証の他にも「自動車用品量販店併設整備工場認証」や「ガラスリペアショップ認証」、「クラシックカーガレージ認証」などオートアフターマーケットにおいて数多くの認証を行なっている。安全運転支援システムや自動運転など、車の進化に伴い、自動車の修理・整備を中心としたアフターマーケット市場は急激な変化を余儀なくされている。過渡期である現在は、昔ながらの経営を未だに続けている工場と、新しい技術に対応すべく設備を導入し技術を身につけるために努力をしている工場が混在している状態だ。愛車を大切にするクルマ好きの方にとっても“他人事”とは言えないことだけに、修理工場の良し悪しを測る“モノサシ”となる認証があることを是非知っておいて頂きたい。
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