残り41日で約3370万円。現在英国で修復が進められている貴重な九五式軽戦車を、日本に呼び戻すのに必要な応援資金とその期限だ。3月に入ってからは、搭載する三菱製純正空冷ディーゼルエンジンが稼動し、74年ぶりに試験走行に成功。とうとう自走可能な状態にまで修復が進められ、里帰りプロジェクトはいよいよ後半戦のラストスパートに差し掛かっている。2回目の試走行では、獰猛なエンジン音に小回りの効いたターンを披露してくれ、レストア完了が間近であることを伺わせてくれた。◆九五式軽戦車を未来に残すということそもそもこの『里帰り計画』は、静岡県にある自動車整備・販売会社「カマド」の社長で、熱狂的なミリタリーマニアとしても知られる小林雅彦氏が、NPO法人防衛技術博物館を創る会の代表として、今年1月30日からスタートしたクラウドファンディングプロジェクトだ。旧日本軍の代表的な九五式軽戦車は、2300台超と日本戦車として最多の生産量を誇ったミリタリーマニアの間では知られたモデル。1981年、戦時中に配備された西太平洋のポナペ島(現・ミクロネシア連邦ポンペイ島)から日本に帰還したが、国内の展示館を転々とした後、2004年にイギリス人コレクターが購入し、日本には一台も現存しない状況となってしまった。この状況を憂うとともに、この国内唯一の九五式軽戦車がイギリスに渡る際、惜しくも手に入れ損ねたとして、小林氏は九五式軽戦車の国内帰還を画策。しばらくは交渉が難航したものの、2016年にこれまた貴重な九五式小型乗用車、通称くろがね四起のレストアを完遂したことをきっかけに、歴史的遺産を保存する能力・組織力が評価され、改めてイギリス人コレクターからレストアのヘルプと購入を打診された。その売却価格は1億円。価格だけ見れば決して安い金額ではないが、「歴史的価値を考えると破格」と小林氏は見て、今回の5000万円をゴールとするプロジェクトに乗り出したのだ。実は小林氏は、NPO法人「防衛技術博物館を創る会」代表という肩書きも有しており、地元静岡県御殿場市に戦車や装甲車、火砲、トラックなどの車両を所蔵する博物館の設立活動も進めている。九五式軽戦車も、国内への返還後はイギリス・ボービントン戦車博物館にて貸与展示するが、将来的にはこの開設を進める防衛技術博物館で展示する計画を描いている。「陸上兵器を収蔵した博物館は国内にない。次の世代の人にまずは見てもらうために残しておくことが大事」と、その志は大きい。◆プラモデル愛好家のあの有名俳優も応援そんな小林氏の想いとプロジェクトに対し、プラモデルの愛好家としてその世界でも有名な俳優の石坂浩二氏も賛同の意を寄せた。詳しくは動画をご覧いただきたいが、石坂氏は「九五式軽戦車は日本人の工作の基本や戦車に対する考え方が伺える貴重な資料。技術者の考えや使っていた人たちのことを考えると置き忘れてはいけない」とした上で、それを日本に残すことについて「今の時代を生きた我々の証」と評している。クラウドファウンディングは誰でも参加可能で、下記の4コースの設定。コースによってお礼のメッセージメールや修復作業・完成状態を記録した小冊子などのリターンが設けられている。・5000円・1万円・10万円・100万円▼プロジェクトサイトhttps://readyfor.jp/projects/type95HA-GO3月20日現在の支援総額は約1632万円。一方で、今回のプロジェクトでは期限の4月30日までに目標額5000万円に到達しなければ、支援の全てが返還され、里帰りは実現しない。近年では、アニメ『ガールズ&パンツァー 劇場版』や海外TVドラマシリーズ『ザ・パシフィック』での登場により、幅広い層から注目を集める九五式軽戦車。それを後世に継承するという歴史的にも意義深い同プロジェクトに一人でも多くの人が参画し、プロジェクトが完遂することを応援したい。
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