「フロントスピーカーをどう鳴らすか」は、カーオーディオをたしなもうとするときの最大の“楽しみどころ”の1つとなる。そこのところを楽しみ尽くすためのヒントを解説する短期集中連載を開始する。記念すべき第1回目は、「何を選ぶべきか」をテーマにお贈りする。■フロントスピーカーは大きく2タイプに分類できる…。まずは、初めてのスピーカー交換に臨もうとしている方に向けて、初歩的な話から入りたい。最初にタイプ解説から進めていく。フロントスピーカーは大きく、2タイプに分類できる。1つが「フルレンジタイプ」、もう1つが「セパレートタイプ」だ。「フルレンジタイプ」とは、1つのスピーカーユニットで低音から高音まで全帯域を鳴らし切ろうとするものだ。とは言いつつ実際のところは、高音再生を担当するツィーターと中低音再生を担当するミッドウーファーとの2パーツで成り立っている。ミッドウーファーの同軸上にツィーターを取り付けることで一体化させて、見かけ上1つのスピーカーとしている、というわけなのだ。それに対して「セパレートタイプ」は、ツィーターとミッドウーファーが別体となっている。それぞれを別の場所に取り付けることが前提とされているのだ。なお、主流は「セパレートタイプ」だ。こちらのほうが圧倒的に種類が多い。さらに言うと、中級以上のスピーカーの中には「フルレンジタイプ」はほとんど見られない。つまり「フルレンジタイプ」は、“手頃なスピーカー”という位置付けなのだ。ちなみに音質的にはどちらが有利なのかと言うと…。これについては一概には言えない。それぞれにメリットとデメリットがあるのだ。「フルレンジタイプ」は音の出所が1箇所となるので音がまとまりやすく、コントロールもしやすい。しかし装着位置が低くなるので、音が足元に溜まりやすいというデメリットも生じる。対して「セパレートタイプ」は、ツィーターを高い位置に装着できるので音場を上げやすい。しかしながら2者の取り付け位置が離れるので、音がまとまりにくくコントロールは難しくなる。■音場を高い位置に設定できると、臨場感が増し聴き心地も良くなる。というわけで、「フルレンジタイプ」と「セパレートタイプ」にはそれぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが優れているとは言い難いのだが、にもかかわらず「セパレートタイプ」が主流となっているのはなぜなのだろうか。その理由の1つには、上級モデルになるほどツィーターが大型化する傾向があるので一体化しずらいということもあるのだが、それにも増して、“音場を上げられる”ことが重要視されているから、という色彩も濃い。音場を高い位置に設定できると臨場感が高まり、心地良いと感じられる度合いも高くなるのだ。であるので、やはりおすすめなのは「セパレートタイプ」だ。特に純正スピーカーがセパレート2ウェイである場合には、交換するスピーカーも「セパレートタイプ」を選ぶべきだろう。そこを敢えて「フルレンジタイプ」にしてしまうと、音が下から聴こえてくることにより物足りなさを覚える可能性が高くなる。さて続いては、グレード解説に入っていく。まずはざっくりとしたところから解説していこう。一般的には、グレードの分類は以下のように行われている。1万円台から6万円台あたりが“エントリー”。そしてそこから10万円あたりまでが“ミドルロー”、10万円から20万円あたりが“ミドルハイ”、20万円以上が“ハイエンド”、大体はこんな感じだ。定義があるわけではないのだが、簡単装着をうたう製品は6万円台くらいまでという傾向があるので、そのあたりまでが初心者向けという位置付けになっている。そしてそれ以上が中級者以上向け、というイメージで捉えられているのだ。■エントリグレードスピーカーのおすすめは、3万円台以上?ちなみにカーオーディオ・プロショップでは、3万円台の製品を“最エントリー”と位置付けている場合が多い。1万円台のスピーカーでも純正スピーカーとの性能差は大きいのだが、しかし3万円のスピーカーと比べると価格は約半分。価格が倍違うと性能差もそれ相応に大きくなる。予算ありきではあるが、頭に入れておいて損はないだろう。また、3万円のスピーカーと6万円のスピーカーとを比べても、ここでも価格差は“倍”だ。なのでこの2つの間でも、性能差は相応に大きいと思っていい。実際6万円台の製品ともなると、満足度が相当に高くなる。ところで20万円以上をハイエンドと紹介したが、ハイエンドには相当な幅がある。上を見れば100万円を超える製品もちらほらある。なお、上級機になればなるほどスペックは参考程度に考えるべきだろう。高価な製品に性能の低いモデルがあろうはずもないからだ。基本的な性能が良いのは当たり前で、チョイスの際の問題となるのは“音の好み”。ここに集約されてくる。なので高級な製品になればなるほど、選ぶ際の“試聴”の重要度が増してくる。試聴会イベント等々を積極的に活用するなどして、いろいろなスピーカーの音を聴き込んで、じっくり選びたい。今回はここまでとさせていただく。次回は、取り付け費用について考えていく。お楽しみに。
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