「“Low(ロー)”=低音」について考える、短期集中連載をスタートさせる。カーオーディオでは、“低音強化”が大きな効力を発揮する。その理由の解説から、楽しみ方のいろいろまでをたっぷり紹介していく。第1回目となる今回は、“低音強化”が効くその理由を考察する。■ホームオーディオでは、“5.1ch”を再生する場合には“サブウーファー”が必要となるのだが…。カーオーディオでは、低音再生用のスピーカーである“サブウーファー”が導入されるケースを、非常に多く見かける。しかしながら、ホームオーディオのシステムをイメージしてみると、左右2本のスピーカーだけで音楽が聴かれていることが多い。なぜにカーオーディオでは“サブウーファー”が必要となるのだろうか。ところで、ホームシアターのシステムにおいては、“サブウーファー”が必要となる。その理由は、「再生するソフトが“5.1ch”だから」だ(“5.1ch”よりもハイグレードな仕様もあるが、それは置いておいて、基本的な仕様として“5.1ch”について考えていく)。“5.1ch”の映像ソフトでは、音声が“5.1ch”分収録されている。内訳は、センターch、フロントLch、フロントRch、サラウンドLch、サラウンドRch、そして、サブウーファーch、この計6chに分かれて音声が収録されている(サブウーファーchは、0.1chとカウントされている)。ちなみに“5.1ch”とは、そもそも映画館の音響システムに向けた仕様である。セリフなどの重要な音声はセンタースピーカーで再生し、さらに前方の2ch、および後方の2chの計4chを設けることで、臨場感の高いサウンド再生が目指される。ちなみにセンターchがあるのは、映画館の中のどの席に座っても同様な音響効果を感じられやすくするため、でもある。そして、重低音が0.1chとして独立再生されるのは、その他の5ch分のスピーカーの負担を減らすため、と考えていいだろう。重低音を鳴らすには、専用の大口径スピーカーを使ったほうが効率的に鳴らせる。しかも、音は低くなればなるほど指向性が弱まるので、前方の低音も後方の低音も0.1chとしてひとまとめに再生しても、サラウンド感が弱まることがないのだ。というわけで、映像ソフトを楽しもうとするときには、ソフト自体にそもそも重低音専用chが存在しているので、それを再生するためのスピーカーが必要となり、“サブウーファー”の設置がマストとなるのだ。しかし、2chのステレオ音源を聴く際には、一般的なホームオーディオのシステムでは、サブウーファーが用いられることは多くはない。通常のホームオーディオスピーカーは、左右の2本のスピーカーだけで全帯域をカバーできるのだ。■カーオーディオでは、“サブウーファー”が必要である“理由”がある。ではなぜ、カーオーディオでは低音再生専用の“サブウーファー”が必要となるのだろうか。主な理由は2つある。1つは、「ドアに取り付けられるスピーカーでは、低音再生に限界があるから」だ。ドアに取り付けられるスピーカーの口径は、一般的には17cm程度が限界だ。そこに敢えて20cm程度のスピーカーが取り付けられることもあるが、それはイレギュラーなケースであり、普通は17cmクラスが最大サイズとなる。しかしながら、この大きさのスピーカーでは、重低音をスムーズに再生することが、物理的に難しいのだ。そして2つ目の理由は、「ロードノイズによる低音のマスキング現象が起こるから」。クルマは走る道具であり、走行すればロードノイズが発生する。それを車内に入り込みにくくする対策法は存在しているものの、ロードノイズをゼロにすることは不可能だ。なおロードノイズとは低周波の音である。それが鳴っている中で音楽を流すと、音楽の中の低音にロードノイズが覆い被さり、低音を聴こえにくくしてしまう。低音再生専用のスピーカーユニット=“サブウーファー”を設けると、これらに対策することが可能となるのだ。■“サブウーファー”を導入することで、3つのメリットを手にできる。ところで、“サブウーファー”で使われるときの“サブ”という言葉には、2つの意味がある。1つは、“サブウェイ”とか“サブマリン”で使われるときと同様の「下の」という意味だ。つまり、ドアのスピーカーが再生する音よりも「さらに下の帯域を担当する」という意味での“サブ”なのである。そしてもう1つの意味が、“サブリーダー”とか“サブタイトル”という言葉に使われるときと同様の、“補助”という意味である。つまり、低音が“ロードノイズ”にマスキングされないようにドアのスピーカーを“補助”する、というわけなのだ加えて、“サブウーファー”を追加することにはもう1つの意味がある。それは「低音をしっかりと再生することで、倍音がより豊かに響くから」である。音は、音階を決定する“基音”成分と、音色を決定する“倍音”成分とで成り立っている。例えば、4弦エレキベースの最低音のEの音は41.2Hzであるのだが、この41.2Hzの音が基音であり、それに対して整数倍の周波数の音(2倍、3倍、4倍…)の音が、倍音となって基音に乗り、音色が決定されていく。倍音は、基音がしっかりと聴こえていないと、その美しい特性が十分に現れてこない。しかし“サブウーファー”を導入して基音がしっかり再生されるようになると、倍音が豊かに響き始める。つまり“サブウーファー”は重低音再生用のスピーカーであるのだけれど、中音、高音の響き方も変えてくれる。“低音強化”はサウンド全体に好影響をおよぼすのである。今回はこれにて終了だ。次回以降は、“低音強化”の具体的な方法を解説していく。お楽しみに。