【メーターパネル】定期的に報道される、ペダル踏み間違えによる交通事故。単にアクセルとブレーキの踏み間違えのようにとらえられることが多いけれど、その直前にシフトの入れ間違え、つまり、ドライブ(以下、D)とリバース(以下、R)を入れ間違えていることも多い。そして、若い世代に比べて高齢者は反射神経がにぶくなり、「間違えた!」>パニックになる>ブレーキペダルを踏んでクルマの動きを止める、という行為がしにくくなることもわかっている。とはいえ、このテの事故は、報道の多さから高齢者だけが起こしていると思われがちだけれど、実際にITARDA(自動車事故分析センター)のデータを見てみると、どの年齢もまんべんなく起きている。となると、全年齢に対し、いかにペダルを正しく踏ませるかと同時に、「いかにシフトレバーを正しく入れさせるか」というところにも、着目する必要があると思う。そんなある日、『プリウス』に試乗した友人が「シフトがどこに入っているのか、一瞬、わからなくなる」と言ってきた。たしかに、一般的なシフトレバーの場合、シフトレバーの位置は、DとかRとか、選択した場所のわきに動くものが多い。ジャガーのシフトはダイヤル式だけれど、これもどこに入れたのか、ダイヤルの脇をぱっと見てわかるようになっている。けれど、プリウスは、どこに入れようとレバーはいつも同じ位置にもどるようになっていて、シフトレバー周辺を見ただけでは、いま、どのギアに入っているかはわからない。知るためには、メーターパネルのなかの表示で確認しなければならないのだ。車庫入れなどで、DとRを入れなおすときは、シフトレバーをさわるために視線をシフトレバーにやり、さらに確認するためにメーターパネルを見ることになる。ハンドルをきって、わちゃわちゃやっていると、慣れない人は視線がおろおろ彷徨ってしまうのだ。◆メーターパネルを、全部真っ赤にしちゃうって、どう?そんな話を、自動車ジャーナリストの大先輩である津々見友彦さんとしていたときのこと(津々見さんは、大大大先輩なのに、いつもとっても気さくに接してくださる)。津々見さんは、Rに入れたら、もっとドライバーにわかるようにするべきだと切り出した。いま、国産車ではR入れたことをドライバーに認識してもらうために、音で教えてくれるようになっている。一方、輸入車にはそのような音がついていないクルマが多い。特に法律はないのだ。とはいえ、日本でDとRを入れ間違えたという事故は、国産車でも多く起こっていることを考えると、今、設定されている音だけでは不十分であることがよくわかる。では、音をもっと大きくする? もっと派手な音色にする? 答えは当然、ノーである。もう音は十分……というのが、このコラムでも私が何度も書いているとおりだ。そんななか、津々見さんには音以外に、あるアイディアがあるという。「メーターパネルを、全部真っ赤にしちゃうって、どう?」津々見さんが言うには、Rに入れて後退しているときは、メーターパネルの情報(速度とか、ガソリン残量とか、エンジンオイルの温度とか)なんて知る必要はない。後退しているときは、リバースに入っていることだけ、はっきりとわかればいいという。うーむ、たしかに。しかも今は、インパネに大型ディスプレイを使っているクルマが増えてきており、技術的には可能だというのだ。クルマに詳しくない人のために説明をすると、これまでスピードメータは、アナログ式になっていて、時計のように数字がふられ、針が動いて指すようになっていた。ところがいまは、高解像度ディスプレイがはめこまれ、時計の数字も針も、画像で作られているのである。つまり、アニメの速度計の絵のなかで、針の絵が動いているようなものなのだ。だとしたら、Rに入れた瞬間、メーターパネルが全面的に真っ赤になれば、「Rに入っている!」ということがわかる。前に進もうとして、Dに入れたつもりでも、間違ってRに入れていたら、メーターパネルが真っ赤になって、いやでも視界に入るだろう。おおーう、なんて、ナイスアイディア!津々見さん、書きましたよ~! もしもこれ以降、このシステムを搭載したクルマがでたとしたら、それは津々見さんのアイディアである。きっと。たぶん。すでに自動車メーカーの人も考えているかもしれないけれど、公に声にしたのは、津々見さんが最初ですからね!岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。